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キンギョ救い、じゃなくって。 |
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2002/07/26 |
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持ってかえったときの、あの複雑な気持ち。今でもわすれない。
いくらやってもやぶける私を見たおじさんが、『おまけね』って、ふくろに一匹入れてくれた。 |
金魚鉢もないのに、私はこれからどうやってこいつを飼うつもりなんだろう?神社の帰り道に考えた。
狭い袋の中で、金魚はすでに弱っているように見えた。
返そうかな、でも恥ずかしいしな、と考えているうち、家に着いてしまった。
『自分で世話するのよ』
遠くから母の声がする。
そこらにあったガラスのうつわを、そいつのすみかにしてやった。
えさは、やっていたつもりだった。
でも、気が付いたら、そいつは台所のゴミ箱にいた。
『やっぱりあんたには無理だったのよ』
――おじさんにすくわれた金魚は、救われなかった。
すごくすごくむなしくて切ない、夏のオレンジ。
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