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藤川真一について


初代モバツイ開発者
想創社再創業 / KMD博士課程
著書〜100万人から教わったウェブサービスの極意―「モバツイ」開発1268日の知恵と視点 [Kindle版]
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January 12, 2013

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我々が日常関わるWebサービスにせよ、企業の端末で扱われているシステムも、ほとんど必ずデータベースと組み合わせてできている。
データベースの組み合わせはとても便利なもので、集計は簡単にできるし、情報のソートは一発。何より、大量のデータを扱うことができる。

以前、あるR社出身の人に、R社が作った住宅情報の功罪という話を聞いたことがある。

この話は、本当にそうなのかは僕は知らないが、あくまでも受け売りということでエッセンスだけ理解して欲しいと思うのだが、R社が作ったのは、

・駅から徒歩(バス)N分
・間取り

というソート可能な序列だった。これが日本の住宅相場のルールを決めた。つまり、R社としては、日本中どこでも比較可能なテンプレートを作ったことが勝利の要素だったと言う。

彼の論としては、ここにもしも「景観の良さ」というパラメータを入れていたら、日本の住宅事情は大きく変わったのではないか?!という興味深い話である。

イマドキのネガティブな表現で言うと、住宅情報が作った序列は社畜製造機だった、とも言えるのかもしれない。

そのことを思い出したのは、以下の記事を読んでいてのこと。

就活についてのインタビュー (内田樹の研究室)
(長文の引用失礼します)


――でも、大多数は就活に必死で取り組み、親も社会もそれを後押ししています

だから、ますます若者が苦しい立場になっていくんです。
いまの就活は、とにかく狭い市場に学生を押し込もうとする。当然、買い手市場になり、採用する企業はわずかなポストに群がる求職者たちの中から、能力が高く賃金の安い労働者をよりどりみどりで選べる。『キミの代わりはいくらでもいる』という言葉を採用する側が言える。
これが一番効くんです。

でも、本当は、若者の手助けを求めている職場はいくらでもあるんです。中小企業もうそうですし、農業林業漁業のような第一次産業、武道でも能楽でも伝統文化も継承者を求めている。
でも、そういう無数の就職機会があることを就職情報産業は開示しない。そして従業員1000人以上の一部上場企業に就職しないと敗残者であるかのような幻想をふりまいている。
大学を卒業したら、スーツを着て毎日満員電車で出勤して、朝から晩まで働く以外に仕事はないと教え込んでいる。

あぁ、そうか・・・学生が必死になってiPhoneを買って、授業の合間に会社説明会に申し込まなきゃいけないのは、データベースのソート可能な序列に囚われてるから、なんだな。

検索するときは頭の中の会社名、、、つまり知名度の高い会社が多く検索される。ソートする時は、企業規模、社員数、人気順などの「集計可能なパラメータ」に依存する。そして、Google検索結果が1ページ目までしか見られないのと同じく、「検索されやすい企業」の上位に人気が集中する。

データベースから検索する時の問題は、「あなたが検索できるワードを知らないと、検索できない」という問題だ。多くの人は、そのキーワードがわからないので、何かのランキングに依存する。

結果、大企業は人が集まり、より有利になる。応募者の母数が多ければ、より優秀な学生を選別することができる。(更に、そこよりももっと優秀な、ワールドワイドで通用する学生を得たい会社は、初任給が高くなる。)

ところが、本当に「自分にとって、やりがいのある企業」なんてパラメータをデータベースでソートして検索することは不可能だから、ネットだけで、自分が就職したい会社を探すなんてのは不可能だ。

まさに冒頭に書いた「家からの景観の良さ」が序列にならなかった住宅情報の話に重なる。

ー・ー

ここから少し話がそれる。Webサービスの設計の話をすると、システムのアーキテクチャとしては、とにかく何かの序列でデータベースに放り込み、大体、何かの序列で抽出して、ソートして表示する。

それが登録日順だと意味のあるデータにはならないし、人気順だと母集団のバイアスに影響されるし、SEOみたいにランキングありきで上位を狙ってくる方法が出てきて、鶏と卵が逆転する現象も起きることもある。

本来情報のソートなんてのは、早々簡単にやってはいけないものもあるハズなのに、当たり前のようにデータベース設計者は"目の前の集計可能な情報”を元に、神となって情報をソートして序列をつけてしまう。

果たしてそれが世の中に良い影響を与えるのだろうか?!ソートされて上位に出た人は純粋に嬉しいので、サービスとしてはプラスに作用する。しかし、上位に出ないそれ以外の人たちには、その序列を決定的に印象付ける。

また検索するためには入力条件も必ず必要で、結局ユーザーの内面をシステムに反映することはできないので、「真のニーズ」が入力条件になることはままない。それが行動ターゲティングやリコメンドというさまざまな手段で、「近しいアウトプット」を抽出する取り組みはどんどん進んでいるが、それでも全ての情報が都合よくリコメンドできるわけはない。電子計算機で作られているシステムの限界はそこにある。電子計算機は、あなたから醸し出される空気を読んで推測するのは苦手なのだ。

そもそもシューカツにリコメンドしたら出てくるのは「あなたが見ている会社に応募した人は、この会社も応募しています」になってしまう。えーと、それって人気殺到してる企業だよね、きっと。

つまり世の中がインターネットに依存しすぎるのはダメで、実生活のランダム性とインターネットは、うまく協働することが必要だ。それによって、より高みを目指せるハズ。これは同時に、僕が考えるモバイルファーストのあり方だと思っている。Appleのおかげでパソコンをスマートフォンという名前で持ち運べるようになったので、これは生かして行きたいところ。

ー・ー

閑話休題

…先日、awabarというITでイキの良い人たちが集まる六本木の立ち飲み屋さんに行ったら、京大の学生で休学して、いろいろ取り組みをやってますという学生に出会った。

京大というと、はてなの近藤さんとか、phaさんとか、ネット業界では「優秀な中でも型破りと言われる人」が目立っているので、

「あぁ京大って、そういう人多いんですよね!?」

と言うと、彼は「自分のようなタイプはマイノリティだ」という。

…まぁ、そりゃそうだよね。

異業種というか大人が飲み屋で会うことができる学生さんというのは、まぁ大体、普通に学生だけをやってバイトして生きてますという人ではない。なんらかしら、自分のコミュニティからは浮いている人だからこそ、こちらにも接点が産まれる。

僕が会うことができない大多数の学生さんは、大学の偏差値と企業データベースのランキングでマッチ可能な情報を元に面接に行くことに時間を費やすのかなぁなんて思った。

この問題は、人間の時間は有限なので、データベースで集計可能な上位企業に人が集中することで、下位企業に人が回ってくる可能性が低くなること。

説明会の予約に、みんなで一斉に苦労するよりも、むしろソートする基準なんて世の中になくて、みんなが闇雲にランダムに企業を探している方が、「やりがい」に到達する可能性って高いんじゃないか?!と漠然と思ったりするのだが、それはそれで会社を探すのに時間がかかるので「シューカツ」には適さない。

シューカツというイベント扱いではなく、もっと自由に、もっと非スケーラブルで、ローカルで個別に動くムーブメントが、総体として大きなうねりになるような仕組みを考えないと、こりゃ解決しないんだろうなぁと思っている。

google的に言うと、「整理する情報」では解決しないところ。インターネットとは親和性が低いが、情報の置き場としてのインターネットは使える。

それがソーシャルなんじゃないか?!なんて言われていましたが、Facebookもタイムライン情報というリアルタイムニュースの序列でリテンションを確保している以上、マスの情報に人の注目を寄せる構造に依存しているわけだし、それがユーザーニーズである以上、今のところまだ夢物語。かつてWeb2.0で梅田望夫さんが望んでたことと同じく幻想で終わる可能性も高い。

携帯やスマホで、コミュニケーション可能性の総量はどんどん増えていってるんだけど、後は、文脈と質なんだよな。そしてそれがナレッジマネジメント的にも、一番難しいわけです。文脈や質を求めると意識高い系のつまらないサービスになって、「このサービスを使いたいと思うか?!」というところでニーズが鶏卵になって、これが見事に使われないんだわ。これもジレンマ。

と、ウダウダ書いてしまいましたが、この文章にあえてオチをつけると、世の中、データベースの序列に従うと、ランキング上位の人以外、あんまり良いことがないので、採用する会社の側も、人一人の時間は24時間しかなくて、8時間は寝ないと生きていけない生き物の総体ということを理解した上で、ソート可能な行列に並ぶんじゃなくて、もう少し、ランダムに生きてくのは賛成ですよ、というお話でした。無責任に言っていますが。

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