October 10, 2012
WebSig1日学校のビジネスクラスで講師を努めました。
WebSig1日学校は、いわゆる即戦力なIT tipsを目的としたものではなく、物事を本質的な視点で考えて、インターネット,Webの未来、ひいては自分たちの未来を考えるための1日イベントです。
WebSigに参加したのは、ペパボに入る前だから2004〜2005年かな。WebSigのボードメンバーの一人で当時モデレーターだったアークウエブの中野社長と、このブログでちょっとしたやり取りをすることがあって、その後、WebSigに参加して実際にお会いしたのがきっかけだった。
WebSigって、受託でWebを作る会社の経営者が主体になった任意団体だったので、参加する人も講師もそういう流れの人が多かったんだけど、なにせ経営者が業界の底上げを目指して作ったグループなので、実装技術のtipsとかそういうことではなく、生き方、働き方の意味合いの方が強くて、もちろん内容はWebの実装、マーケ、自分たちのビジネスでの話が多かったんだけど、ある種の理想に向かって土曜日に一日頭を使って、疲れきって、また次の週の現実に向かう、という場だった。
セミナーって、一日受けて、あぁそういう世界もあるよねってなって、現実に何のフィードバックもしなければ、ただ知り合いが増えるだけの”楽しいだけのイベント”になってしまうのだけど、わざわざ土曜日に、Webの未来を考えようみたいなイベントに集まる人達は着実に前に進もうとする人が多かったように思える。
僕自身もWebSigのモデレーターにいて、周囲に経営者の友だちがいるという環境の中で独立したい気持ちが強くなって独立を目指して、いざ会社辞めてみたらなんだかモバツイで違う方向に忙しくなっちゃったけど、その先に今がある。
で、一日学校の話。
今回、初めてのWebSigでの登壇。
「温故知新」というテーマで、つまり「古きをたずねて新しきを知る」ということなのだが、この授業の設計は相当苦労した。「クラウド、プラットフォーム、ITで生きる。えふしん流サバイブ術」というタイトルにしたものの、参加者に何を持って帰ってもらうべきかという設計は当日の朝まで悩んでいた。
プレゼンファイルは3バージョンまで膨れ上がり、最終的には「自分が考えるサバイブのポイント」として、自分コンテンツとすることにした。
1.製品を作る心構え
2.ネットビジネスの心構え
3.働き方の心構え
まず、
1.製品を作る心構え
何を話したかというと「使い勝手」の話でした。しかし単純に使い勝手の話をしたわけじゃないです。
僕の前のセッションの鈴木由歌利さんと合致してるところが結構多くて、鈴木さんは、ブランドについての授業だったが、一例で言うと、鈴木さんのブランド論では心にフラッグを立てよ、という話があったが、僕は似たようなメタファで、看板という言葉を使った。
例えば、埼玉の方にある国道沿いにかかげられてるイオンの看板のようなリアル看板は、顧客の日常の行動導線の中に立っていて、あ、買い物に行くならイオンに行くかってのを看板は日々訴えかけているのだけど、それって不動産コストをかけて、やってる施策。でもネットは、そもそも看板を置くのが難しいのと、看板の代わりのバナー広告に無尽蔵にお金をかけるのが難しかったりするので、お金が無い分、知恵を使わないといけない。
iPhoneのアイコンにせよ、ブラウザのブックマークにせよ一定数たまると、全く目には入らなくなって、結局視覚的な問題じゃなくて、ユーザーのマインドシェアを取っているアプリじゃないと、起動するきっかけがなくなる。
特にモバイルアプリは、暇つぶしを提供するゲームなどのアプリ以外は、普通、そのアプリを起動すべきコンテキストに沿って存在していて、そこで適切にユーザーが使いたいと思えないと使ってもらえないのだから、それってブランドもさることながら、機能大事だし、究極的に言ってしまえばユーザーインターフェースの話だったりもするよね、だから使い勝手って超大事だよねって感じの話をした。
2.ネットビジネスの心構え
世の中Web2.0だのソーシャルだのいろいろあるけど、結局、Webのアーキテクチャであるハイパーリンク大事だよねって話をした。
でも、どうやってリンクをゲットするかってのは理想論を超えて言及はできなかったんだけど、僕の後の中川淳一郎さんが、ニュース編集者の立場で、人の興味、共感をどのように得るか、そしてYahoo!ニュースに如何に載るか、つまり最強のWebサイトからどうリンクを得るかという話で、僕が言えなかった部分の補填をしていただいたと思う。
つまり、ビジネスコースが最初からこれを想定した設計になっていたというよりは、Webビジネスに必要なことを考えていったら、講師それぞれの立場で割と似たようなことが繋がって、3つのプレゼンは連続性を持っていたのではないかと勝手に思ってる。
だから多分、生徒として参加された方々は満足感高かったんじゃないかなぁ、というかそうあって欲しい。
3.働き方の心構え
新しい生き方として、岡田斗司夫さんが提唱した評価経済社会を取り上げてみた。別にすべて鵜呑みにするような話じゃないし、IT業界においては、そんな特別な概念でもないのだけど、お金で説明できないことを整理するには非常に使えるツール。
例えば、家入さんのLivertyを分析して、この組織が、家入さんの二度目の上場に繋がるか?!という評価経済のストック構造についての話をした。
その後スタートアップの話をしたかったんだけど、そもそも、何故評価経済の話を持ち出しかというと、スタートアップで起業したりって、結構無理が伴うのと、例えば会社を辞めて新しい生き方をするんだ!ってスタートアップを作っても、結局、そこではチームであることが求められ、代表取締役と経営陣と社員という普通の企業体の構造になるわけ。
となると大事なのは、「あなたが社長になりたいか否か」というあたりなんだよーという話で、めぐりめぐって、自分は何を実現したいのか?!というものすごく基本的なところが大事になる、みたいな話をしたかった。言うは簡単なんだけど、本当に大事なこととして実感するのが難しいと思うので、そこへのチャレンジと言いますか。
で、ここが失敗したのが時間が足りなくなっちゃったこと。
ここは割と興味を持っていただいた方々も多く、もう少し話を聞きたいとおっしゃっていただいたところだったので残念。
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WebSig1日学校恒例の体育館での最後のワールドカフェでは、「何故有料メルマガは流行っているのか?」という問い。僕は最初講師席で話していたので、中川淳一郎さんと東浩紀さんがいる前で、この話をするという豪華過ぎる展開。
mayumineが書いてた話が面白いなぁと思って、会場でアンケート取ったら有料メルマガを取ってる人が非常に少なかった。確かに、土曜日に参加費8000円も払って、かつモノレールに乗って八王子まで来て、自分たちの未来を考えている人たちが、ほとんど有料メルマガを取っていないという事実は、明確にそこを求めている人が読むものではないということがわかる。
参考:WebSig一日学校( #websig1ds)に行った感想。有料メルマガは流行ってないし、IT化が進むほど我々は豊かにならない | URAMAYU
ドワンゴの川上会長がtwitterで、有料メルマガについて、楽しいものに、得るもの、理由なんていらないみたいなことをおっしゃってて、それはたしかにそうだなぁと思ったのだが、だからこそファンクラブ、ディナーショーという指摘はそのとおりなんだろう。
Twitterを通じて「できる個人」がコンテンツとして成り立ってきたので、それをストック型のビジネスとして成立させようとする試みが、イマドキの有料メルマガの流れ。
ただ、自分の切り売りタイプの有料メルマガは、ファンクラブ会報誌としては相当負担が大きいので続かないのでは?!という意見が出ていました。
家入さんとやまもといちろうさんの対談の記事で、この先に絶対、何かあるんじゃないか?!みたいなことを書かれていたけど、あるとすると、文章の延長線ではなく、結局、岡田斗司夫さんのやってる、パトロンに支えられる時代なんじゃないかと思うのだけど、どうなんだろうかなぁ。
メルマガを書くのは大変だから、一緒に何かをしたり、関係性を持てれば、それで満足という人が何かを提供する世界。
はっ、それってLivertyじゃないの?!とか思ったりするわけで、割とその辺がぐるぐる回っているわけであります、お後がよろしいようで。
ちなみに個人的に有料メルマガについてどう思っているかというと、これ個人が比較的楽にできるストック型のビジネスなので、ビジネスモデルとして優れていて、非常に羨ましいなと思っています。