August 17, 2012
Twitter apiのガイドラインが改定になるそうです。
Twitter API v1.1でのAPI利用ルールの変更について
こちらの日本語ブログは当たり障りのないところしか書いてないので、関係者は英語の方を読むことを強くおすすめします。
Changes coming in Version 1.1 of the Twitter API
どうしてもこういう制約が増えるものは、ネガティブが極大化するので、ちょっと冷静に見てきましょう。
■すべてのapiのエンドポイントに認証が必要、さらにレートリミットの変更
現在、検索apiなどはOAuthの認証が不要で、IPアドレス毎に一時間あたりのアクセス数が定められていますが、これが廃止になり、2013年3月までに全てOAuth認証を通した方法に変更を求めています。
さらに、1時間毎にapiにアクセス可能な数が、apiの内容によって変わります。今までは認証が必要とされる、すべてのapiへのリクエストの合計が1時間あたり350回だったのに対して、タイムラインの表示やユーザーの検索などのソーシャル分析に使えそうなapiは、むしろ720回に拡張され、それ以外のapiが60回に制限されました。
ということなので、アクセスするにはOAuth認証を通じたアカウントが必要になります。今までホワイトリストで認証なしで大量のアクセス数を許可されていたクローラ系やbot系サービスが制約を受けると思います。
それに対してtogetterのようにユーザーがログインして、ユーザーの操作の範囲でツイートを操作するようなサービスは影響を受けません。ではなく、favotterなどを含む、自動キュレーション系が影響を受けます。
これはsummifyを買収したことに端を発する自動キュレーション系制約への動きと言えます。
OAuth認証後のアクセストークンの範囲で自動ツイート解析をするのは問題ないので、GunosyやTwitterユーザー解析系はこれについてはあまり問題はないのかなと思います。
(ただし、ツイッターの競合カテゴリに対しては、後に記載する認証キーに対するユーザー数制限がネックになります)
■ディスプレイガイドラインの準拠が必須に。
今までツイッター社から提示だけはされていたツイート表示のガイドラインへの準拠が強制されます。これはツイッタークライアントがツイッター本体と同質の体験を得られるようにするというのが理由です。
表示方法の変更について影響を受けるのは、Feel On!などのツイートの見せ方を工夫するツイッタークライアントでしょう。
全体的に影響を受けるのは、リンク先にツイッターのページへリンクしなくてはいけない部分がある点と、t.coへのリンクを強制されているところなどのリンクポリシーの方が大きいと思います。
LinkedInがツイート表示を辞めたのはおそらくこのリンクポリシーの問題であったのかなと想像します。
■プリインアプリにはTwitterの認証が必要
NECのスマホやPCにプリインされてる、ついっぷるも、わざわざTwitterに承認を受ける必要があるってことですよね。
それならともかくとして、スマホにインストールされてるソーシャル電話帳などのTwitter連携機能も範囲に入るんでしょうかね。
この辺の制約は昔から変わってないので、特に思う所はありませんが、明示化されたということですね。一定の品質を実現するなら、そういう関与は必要でしょう。
ただ、そのデバイスがイケてるデバイスになったら後出しジャンケンされて公式を載せなさいと言われる可能性を残してるので、ツイッタークライアントを作ることが戦略として合理的な判断かどうかはわかりません。デバイスメーカー側だったらアリでしょう。
■一番重いのは、10万人以上のユーザーに使わせるには承認が必要だということ。
これどういう意味かというと、その先の成長にツイッター社の承認が必要だということになります。
ということは現時点で言うと、彼らが推奨していないツイッタークライアント、キュレーションサービスは事実上10万ユーザーが限界ということになります。
既に10万ユーザーを超えているアプリについては、現状のユーザーベースの200%までは増やせるそうなので、10万ユーザー以上抱えているツイッタークライアントやキュレーションサービスの認証キーは、今後レア財産として扱われることになるでしょう。古くからのツイッタークライアント作者の皆様、大事にしましょう。
しかし、この制約についてはネガティブに考えざるを得なくて、ツイッタークライアントだけなら歴史的経緯上、まだ理解できるのですが、ツイッターがSummifyを買収した結果として、キュレーション系サービスに制約がついたことは、今後、ツイッター社が買収したサービスのカテゴリは同様に、この制約の対象になりうる、ということになってしまいました。
ツイッターにとってホットな他のカテゴリも、ライバルの買収と共にカテゴリ丸ごとオワコンになる可能性を秘めているとしたら、今後、新たにツイッターapiを使ったサービスにチャレンジするリスクは高いと思わざるを得ません。
日本で言うなら電通やドコモなどの大企業が特別に契約してビッグデータを活用するためにしかapiを使わなくて良いので、アーリーな開発者はもういりません、ということなのかもしれませんが、ツイッターを使ったイノベーションを阻害することになるので、結局、この影響は長期的に見たらツイッターに帰ってくるんじゃないでしょうかね。
現時点で彼らはSocialCRMなどを推奨していますが、もう少し細分化していった先に、Twitterが買収した瞬間にカテゴリ毎オワコンになるゲームに参加していることになるのかもしれません。
また日本が圧倒的に不利なのが、彼らはシリコンバレーにしか視界にないという部分。以前、あるTwitterのイベントで、ツイッターに買収されるサービスってどういう流れで買収されるの?という質問をした人がいて、回答としては、シリコンバレーで仲良くなって…みたいな回答がなされていました。
そう考えると、Twitterエコシステムを生かすスタートアップの成功パターンは、
1.シリコンバレーで起業は絶対条件。
2.10万人以内 x レートリミットの範囲で取れるツイッターデータを原資として、ツイッターに買収される素敵なサービスを作る。
3.ライバルが先に買収されたら、カテゴリ毎オワコンなので諦める。
ということになると思います。とは言え、これだけのデータが取れるサービスは少ないのですから該当しそうな人は是非チャレンジしてみてください。
■プラットフォームに生殺与奪を握られてるから仕方ないじゃん、と思うかもしれませんが…。
確かに状況が変わるのは事実です。
例えばソーシャルゲームも、家庭用ゲーム機の主要プレーヤーが入ってきたことで、一気にランキングが変わったんじゃないかと思いますし、App Storeも同じですね。
ツイッターapiはおおよその機能を解放するという過去見たことのないアプローチで大きくなりました。
api戦略というのは、プラットフォーマーの囲い込み戦略にもとづいて行われるものです。逆に言うと、ちゃんと作られたapi戦略の下では、サードパーティはプラットフォーマーの考える以上のイノベーションは作れませんし、期待もされていません。
そこでの優等生は優れた弟子である、というのがプラットフォームに乗る意味なのですが、それが単純な仕様の話であれば、このツイッターapiの仕様変更の話は、ほとんどについて、あまり問題ではないと思うのです。
例えば、OAuthを使わずにやっていたデータアグリゲーションサービスは、どうにかしてユーザー登録してもらうように変えていけばいいわけで、それができているサービスも多数あります。
(アカウントを集めやすいツイッタークライアントの価値は、この辺への応用可能性にあると思います。)
そうじゃなくて、今回の話でも書いてる怖い所は、戦略などという言う大人の言葉からはかけ離れた「恣意性」にあると言えます。
今回の制約でツイッタークライアントと、キュレーション系サービスはユーザー数の上限が決まったと考えるの妥当でしょう。
以前ならツイッタークライアントを制限したかったのはわかります。ただ、既にiOSのクライアントアプリのシェアが、公式アプリで75%を超えてるという話もあり、もはやサードパーティを無視してもいいところまで来てます。もはやツイッタークライアントを制約するのは本質的ではなくなっています。
せっかく大量のapiを公開しているわけですから、Twitter社がカバーする必要のないデバイスなどにもツイッター機能を搭載された方が合理的なハズなのに、何かの力が働いている。(おそらくUberMedia騒動での恐れと、広告の最大化ということだと思いますが)
それ以上に影響が大きそうなのは、Summifyを買収したことで自動キュレーションサービスに制約をかけるという流れ自体が、他のカテゴリーにも波及するという恐れを抱かせたという部分が、非常にイケてないと考えます。
二個あるものは三個ある、ものです。
Twitter社がシリコンバレーしか見ていないと書きましたが、もし彼らがもう少し視野が広ければ、もっとサードパーティに直接介入するという手もあったハズなのですよね。例えば、電車で言うなら地方路線の第三セクターみたいなニッチなところに、資本参加して都合の良いように扱う、とかですね。それでも彼らの言う、Twitterの統一されたエクスペリエンスを実現できるハズなんです。
そういう時にサードパーティの公平性という言葉がよく使われると思うのですが、買収してカテゴリ丸ごとオワコンにしてる方がよっぽど…と思うわけでして。
彼ら的な視点で言うと会社もまだまだ小さい、という現状があるからこそなのかもしれません。ただ、せっかくの既存の会社になかった素晴らしいところが多少なりともシュリンクしていくところだけが寂しいなぁと本当に思うところです。
ちなみに、この話はひっくり返すべく英語で文句を書いたほうが良いと思います。彼らも反応を見ているかもしれませんし。