July 22, 2012
おおかみの子供という表現で、男と女、それぞれの成長と旅立ち、そして母親の子離れの構図を、田舎、自然という非常に狭い世界でまとめあげたという点が素晴らしい作品だったと思います。
母親心理の描き方が絶妙のようで、ツイッター上でも子育て経験のある人が、この部分を絶賛するような反応もありましたが、原作、監督の両方をこなした細田監督は子供がいらっしゃらないようで、そこはさすがプロ、と言ったところでしょうか。よくネットサービスでも子供ができると子供向けネットサービスを作る人が沢山いますが、できれば子供がいるいないに限らず、子供を持つ親御さんに便利に使ってもらえるサービスを作れたらプロですよね。
ふろむださんが、この映画に関するblog記事で
【ネタバレなし】「おおかみこどもの雨と雪」はどのように面白いのか?
恋する少女から母になったり恋愛から家族愛に変化したりするのではなく、「恋する少女であると同時に母である」ということでもなく、恋愛と家族愛の融合ということでもなく、「母であることが恋する少女であることの部分を構成している」、そういうラブストーリー。
というのは非常に納得しました。多分、そういう要素がないと結構ベタになっちゃうと思うのですね。
また、特にこの作品を見る男性にとって、自分の母親だって昔は一人の女性だったわけだよね、ということをどこかで上書きしてあげる必要はあったと思います。そういえば、ジブリに母親が主人公だった作品はありませんからね。
丁度、この作品の前に、映画館に見に来たのは「コクリコ坂より」だったのですが、主人公の描き方が、割と似ている印象があったんですが、この作品には母親である花が、性としての女性っぽさをしっかり出しているところなんだろうなぁ。
でも、そこの球の投げ方はアニメらしく絶妙なんでしょうね。女性としては乳首は描かれないけど、母親としてはあえて描かれていたり。
あと視点の話で、子供達をオオカミの視点で見ると、まだ子供達が小さかったころの散歩をせがむシーンなどは、人間の言葉をしゃべれる犬だったら、こんな感じなのかなぁと思ったりしました。人間の視点以外でも割と興味深いシーンがありましたね。
ただ、その比喩は男の子(雨)の成長に描かれていて、雨が新しい出会いを通じて知り行く世界はいわゆる「社会(会社社会)」の比喩なのかなとは思いました。母親が理解し得ない世界を通じてアイデンティティを形成していくわけですね。
絵の描き方も含めて、非常に繊細な作品でした。
記事のタイトルに書いた中目黒の話は、いくつかの絵がそんな印象があったという話ですので未確認です。マニアの方は追っかけてみてください。するとあのシーンはもしや目黒川?!ということなんですかね。とても印象的なシーンでしたね。
(追記:さっそく、舞台は国立じゃないか、という指摘をもらいましたー:->
一橋大学が舞台なんですねー。)
最後に、先日TV放映時にはツイッターのタイムラインを占拠していた「サマーウォーズ」ですが、「おおかみこどもの雨と雪」公開記念ということで期間限定の格安版が出たそうです。
3年前に公開された頃には時代はまだ早く、Facebookが日常化してきた今の時代だからこそ符号が合致するという意見も聞かれる作品です。先日のテレビを見逃した人は是非どうぞ!