July 11, 2012
書籍「リーン・スタートアップ」に関するまとめエントリーである。本エントリーでは第3部で気になったところをピックアップしています。
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■第3部 スピードアップ
第9章 バッチサイズ
バッチサイズとは一つの作業の行程のことで、モノを大量生産する時に部品を沢山つくってから次の行程に渡すか、少数の部品を必要な時に必要な量だけ生産して、次の行程に渡すか、という選択があった時に、かつては前者の方が効率的と思われていたが、実は後者の方が効率的だったという話である。
スタートアップに適用すると、構築ー計測ー学習の一連のプロセス=バッチサイズを縮小することで、持続可能な事業の構築方法をできるかぎり短時間に学ぶのが目的となる。
この章はあんまり面白くないので、本書とは無関係なことを書いてしまうが、昔いた製造業の会社で、トヨタ系列の某社での工場生産ラインの段取り替えの自動化プロジェクトにちょっと関わって、一時期、毎週末になると名古屋方面に出張する生活を送っていたので、この辺の話は非常に具体的なイメージがわくとともに懐かしい気持ちになる。アンドンとか懐かしいです。
モバツイやってた時にもサーバのどこが障害になってるかを一発で社内で可視化するアンドンを作りたかったなぁ。大規模にサーバ管理されてる会社は是非作ったら良いと思います。社員の生活を支えているサーバの状態は、社員全員で意識すべきです。
あと、アドネットワークのリアルタイム成果と目標差異を一発で確認できる画面とかも大事ですね。
第10章 成長
この章では、スタートアップが持続的に成長に必要なメカニズムの話が書いてある。
・口コミ
・ユーザーに製品やサービスが使われることで宣伝になる効果
・有料広告を通じて。獲得に必要なコストより、得られる収益が上回れば永遠に広告を出す事ができる。
・顧客の購入やサービス利用のリピートを通じて。
月額課金などのストック型はここに含まれる。新規獲得数と離反率(解約率)を比べて、新規獲得が必ず上回っていれば成長する。
開発の優先順位や、既存顧客へのサービス向上、コストの削減等の多数の選択肢の中から、どの部分にエネルギーを集中するべきなのかの指標である。
成長のエンジンは始動するのも難しいが、もう一つ、このエンジンはいつか必ずガス欠を起こすという問題がある。顧客の行動をまったく変えられていないのに、製品の改良が進んでいると誤解してしまう。成長をもたらすのは効率的に回転し、新しい顧客を呼び込む成長エンジンであって、製品開発による改善ではない。だから成長が突然スローダウンすると危機的状況になる。
会社と言うのは成長のエンジンをチューニングしつつ、そのエンジンがへたった時に新しい成長の源となるべきものを開発するなど、さまざまな活動を総合的にマネジメントしなければならない。その具体的な方法は12章に記述されている。
第11章 順応
この章は、状況の変化、進化に適応する組織を作る話である。
リーンスタートアップの初期は、検証に寄る学びと実用最小限の製品を作ってスピーディーに製品を届けることになる。また、顧客から学ぶために必要な範囲を超える作業はすべて無駄、一方、構築ー計測ー学習のフィードバックループは継続的なプロセスで、必要最小限の製品リリース後、すぐさま次なるループに入って行く。
このプロセスを忠実に守ると、サーバインフラや最終的にあるべき製品品質がおろそかになる可能性がある。つまり、学びの結果、顧客が実際に欲しい製品が作れるようになった瞬間に、ビジネスがスローダウンする問題に直面する。
リーンスタートアップへの批判は、大体この辺と、必要最小限な製品って何?!という二つに集約されており、本書はそのことは考慮済みである。
つまり組織をうまく育てて行く事で、ジャストインタイムでスケールアップを品質を両立することが必要だということだ。
その方法として「5回のなぜ」を提案する。
問題やトラブルは、正しい進化のあらわれだ。問題に対して「何故○○は起きたのか?」というのを5回繰り返して行く事で真の原因を見つけ出す事ができる。対策としては、5つの答えに対して、比例投資を続ければ良い。症状の度合いに応じて投資配分を変える。
この方法を取ったときの陥りやすい失敗は、「5回のだれ」になってしまうことだ。
5回のなぜを導入する場合、特にはじめの頃、組織のネガティブな部分を突きつけられると覚悟しなくてはならない。この方法を導入すると、新しい製品や機能に投入できたはずの時間やお金をミスの防止に使わなければならなくなる。これは会社の上層部がこのプロセスを支持し、導入を推進しなければ順応性の高い組織は作れない。
その他このプロセスの導入の難しい点などが解説されている。一番難しいのは、会社のお荷物問題に到達してしまって、気持ちが落ちてしまうことなどが挙げらていれる。しかし、決して理想論ではないので、是非、興味あったら読んでみて欲しい。
第12章 イノベーション
この章は、これまで書いてきたリーンスタートアップの手法を、既存企業や、自社の中の競合事業がある場合に、どのようにイノベーションを進めるか?!という章である。
企業は、4種類の仕事のマネジメントをしなくてはならない。
1.まず製品の開発
2.事業が成長期に入ると、アントレプレナーはスケールアップの問題に直面する。新たにメインストリームの顧客を獲得し、新しい市場に浸透していくにつれ、さまざまな仕事が増える。またそっくりな製品を作る企業や急速に追い上げようとする企業、いろいろな意味で真似しようとするところなど競争相手も増える。
3.新市場が確立するとルーチンの仕事が増える。
製品のコモディティ化を防ぐ施策や、コスト削減による利益率向上など。この段階では別のタイプのマネージャーが必要になる。この段階は予測可能な成長をコントロールすることになる。
4.業務コストとレガシー製品のマネジメント
アウトソーシング、自動化、コスト削減の時代になる。ただしミッションクリティカルなインフラであることは変わらない。この分野に投資しても売り上げが増えることはない。
製品を出すと、このようなことを同時進行に抱えることになる
製品が発展し、次の段階へ移動して行くときに人も一緒に移動して行くケースが多い。創造性の高いマネージャーが製品の成長や最適化に力を取られ、新しいものを生み出せなくなる。
この問題を回避するためには上記4種類の仕事それぞれに対して異なるマネジメントを行い、部門横断的なチームが生まれるようにすればよい。
第13章 エピローグー無駄にするな
省略
第14章 活動に参加しよう
省略
この話は以上になります。
丁度この記事を書いている間に、リーンスタートアップを否定する話や、その反応、リンスタのセミナーの話がツイッターに流れていて、何故かタイムリーに話題になってたので、これはお月さんの巡りの問題なんだろうと思っているが、それらの中で、一番熱いなーと思うのは、僕が前働いていたペパボでのリーンスタートアップの資料だ。
「開発者のためのリーン・スタートアップ」「リーン・キャンバス入門」の資料を公開します
正直、この資料だけ見れば、自分的にも記事は書かなくて済んだなーという話なのだが、最近はてなから転職したantipopさんの社内資料で、熱い。あまり熱くて周りがついていけてるか若干心配に思いつつも、ペパボであれば「5つのなぜ」をチーム全員が実践することと、仮説と定量化の課題設定が正しく設定できるようになれば、あとはマネジメントがカバーできる話なので、事業部長、ディレクタークラスがしっかりやっていくことで実現できるんだろうなと思った。
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