July 18, 2010
最近のPCオーディオ環境はいろいろ変わってきて、最大のポイントは、FM放送がインターネットを通じて聴けるようになったことだと思う。radiko.jpではTokyo FMが聴けるので、山下達郎の「サンソン」を毎週楽しみにするリスナーは、FMチューナーよりもインターネット経由で聴いた方が音質が良いのではないだろうか?!
そういう事情で、実はPC用のスピーカーは重要になっている。自分のオーディオ環境は、最近は適当な状況で、MacBook Proの内蔵スピーカーか、ヘッドホンで音を聞くという状況だった(6年前にレビューを書いたBose Companion 3は壊れてしまった→ご参考)
今回、1万円で買えるピュアオーディオ型のUSB接続型スピーカー「Olasonic」のブロガーイベントに参加して、モニターとして本体をいただいた。
タマゴ型のデザインのスピーカーである。
このタマゴ型の形は、ただのビジュアルデザインではなくて、本体のプラスチック部分で音が鳴ってしまって音が濁らず、クリアに鳴らすための「理にかなった設計」だと言う。
また、足下の台になっている部分は、シリコンゴムでできている。これは、床面への振動を極力減らしたり、スピーカーの角度を自由に設定して、音の広がりをユーザがカスタマイズするためのこちらも「理にかなった設計」なのだそうだ。
と、おっしゃっていただいたのは、このOlasonicを開発された「東和電子」代表の山本さん。
元ソニーのオーディオ部隊の事業部長、まさに日本のオーディオシーンを支えてきた主役である。独立された後は、オーディオの経験を元に、受託での設計業務をやられてきたとのこと。スタッフにもソニー出身のエンジニアの方が多いそうで。
そんな東和電子さんが、取引先とのコンフリクトを避けた先にあった「ニッチな製品」が、USBケーブル一本で駆動するスピーカーだった、というのがバックグラウンドにあるストーリー。
僕からすると今一番のオーディオニーズの最先端に立ったという印象だ。
家電屋さんで売っているUSBスピーカーは、その製品イメージを想像すると「どこの会社が作っているか想像がつかない、安かろう悪かろう」の世界。メインの価格帯は、3000円〜5000円。
そんな人たちに振り向いてもらえるように、もうちょっと高級な1万円のスピーカーを企画したとのこと。ちなみに話を聞いていて、もし同じ人たちがソニーで企画をして出していたら、同じ設計で定価3万円〜4万円は堅いだろう。
さて、バックグラウンド的な話はこれぐらいにして、製品そのものについてレビューしたいと思う。
このスピーカーの特徴は、「とことんピュアオーディオなアプローチで作られた設計」にある。
冒頭に筐体のタマゴ型のデザインの話を書いたが、このスタイルは音をクリアにならすための必然性のある技術選択に基づくデザインだそうだ。
特に低コストで素材の制約も多い中でのデザインというのもあるだろう。
USBのスピーカーは、設置場所から耳までの距離が50cm程度の範囲に収まる。ここでOlasonicは、心地よい音の広がりの空間を作り上げる。いわゆるドンシャリの迫力ある、というよりは、とてもクリアで、広がりがあって、どこで音が鳴っているかが再現されるような、という表現になるだろうか。ヘッドホンで音を聴くのととは違う、「心地よい場」が再現されるのが特徴的だ。
また、USBスピーカーで不足しがちな低音域のパワー不足に関しては、パッシブラジエータと呼ばれる低域について共振してくれる「駆動部のないスピーカー」だそうだ。
つまり、電気的に動くのではなく、グラディウスのオプションのようにメインスピーカーが鳴らす音についてきて低音部分に反応してくれるスピーカー部である。このタマゴ型の筐体の背中に、これがついていて、低音を補間してくれる。
これはトールボーイと呼ばれるスピーカーなどでよく使われている仕組みだそうだ。とことんピュアオーディオのノウハウがつまっている。
ちなみに、パッシブラジエータについては置き場所によって、遊びがいがあるみたいで、背中から鳴っている低音を壁で反射させてあげるのか、そのままスルーするのか?によって音が変わるのが印象的だった。
また、このスピーカーの最大の特徴として、USBケーブル一本で接続する割に、ハイパワーを実現しているとのこと。
USBは簡易的な電源しか取れないので、ハイパワーなスピーカーを駆動するのは難しい。Olasonicは、音楽自体がハイパワー領域よりもそうでない領域が多い特性を利用して、音楽出力が小さい時に、電池(コンデンサー)に電気を蓄えて、出力が高いところで放電する。こういうハイブリッドカーのような仕組みで、高出力を実現する。
また、回路設計で高い電源効率を確保していて、省エネスピーカーとしても活躍する。
「高い電源効率」というのは、せっかく電気を流しているのに全く何も利用されずに、そのままスルーして流れていってしまう割合が低い、ということだ。
実際に聴いてみると、深夜のイージーリスニングに最適な音の広がりや軽快感を実現してくれる。また良質な音源になると、突如、その牙を向いて、豊かな中音域だけでなく、低音、高音が際立つ音楽を奏でてくれる。特にピュアオーディオが強いジャズやピアノのような音源は、そのままこのスピーカーの得意な領域と考えても差し支えないだろう。そういうアプローチで開発、調整されているスピーカーだから。
また、ポップスも音源なりに聴こえる。ポップスの特徴として、特に80年代ポップスはひどいのだがエフェクトをかけまくりの影響か、スピーカーによってはお風呂の中で聴いてるような反響音を再生してしまうのが問題になるが、このスピーカーではそのようなことはない。
MP3の圧縮音楽の悪いところも割とそのまま聴こえてしまうので、「音源なり」という感じは強い。この辺はアンプで余計な処理を加えないピュアオーディオが故の特徴だろう。
聴いた印象としては、iPhone,iPodをヘッドホンで聴いてるのと、割と同じような印象を持った。(iPodもフラットで多くの人が納得をする音質を鳴らすと思っている。)
■最後に
今回イベントに参加した人のtwitterでのつぶやきを見ていても思うのは、このスピーカーを1万円のスピーカーとして見ていないことだ。
オーディオのプロが作ったスピーカーで、いくらのライバルのスピーカーと戦えるか?などという考え方をしているレビューが見えたのが特徴的だった。
そういう意味で、パソコンの横にちょこっとスピーカーを置いても良いよ、という人には買い以外の何物でもない。
なお、視聴してみたい人は、日本のスピーカーで初めて取り扱いが始まったアップルストア、と店舗によってはヨドバシカメラで視聴できるそうだ。
以下のリンクからも購入することができる。
売り上げランキング: 5883
すごい!卵が振動しています!
これほどの音質とはびっくりです
高い技術力に裏打ちされたサウンド
スピーカーの再発明か?!
なお、最大の問題点かもしれないのだが、このスピーカー、今のところiPhone , iPadにつながらない。iPadの場合は、Camera connection kitにつないで、電源を供給してあげるとつながるそうだが、せっかくの簡単さが失われている。
USBのデジタル出力で繋げるには、もうちょっと工夫が必要そうだ。是非、iPhoneや、iPodのドック型の接続インターフェースを出してほしいところ。