March 10, 2010
かつてパソコン通信のネットにいたころ、そこで起きる「荒らし」と呼ばれる「悪質ユーザー」について、「いや、彼らも本当は悪い奴じゃないんだよ」という管理者の言葉があった。
つまり、パソコン通信上では悪ぶってるかもしれないが、普段は普通の人で、ネット上の行動とリアルはかい離しているという見方だ。「人を殺すと言っても、本当は、そんな行動なんてしないんだよ」という性善説的な考え方である。
しかし、2ちゃんねるの利用者から、バスジャックの少年が出た時に、その考え方は過去のものとなった。
ネットとリアルがリンクして、実際に事件が起きるなんて!
そして、twitterが出てきて、秋葉原の殺傷事件をUstream中継する人が出てきて事件の現場がライブで目の前のパソコンに展開されるようになり、モバイルコンピューティング+ツイッター+Ustreamで、今では各々の生活の一部が、ネットを通じてリアルタイムに相互接続できる時代になっている。
変化の中で、かつては「少数派」だったネット上の政治への意識が、もっともっと具体的に政治に影響を及ぼす(選挙への影響)ようになっていってもおかしくはない。
これまで特定の業界団体や、特定の宗教法人が、彼らの利益の元で、選挙の結果を左右していたように、何がしかの意思やパワーバランスの元で、ネットが政治に影響を与えるようになっても、そろそろおかしくない状態になりつつある。
この本は、ものすごい面白かったです.。ヤバイす。(献本ありがとうございます)
ITジャーナリストの佐々木俊尚さんの新刊です。
「マスコミは、もはや政治を語れない」
とりあえず僕が本書の魅力は語るには力不足すぎるが、どうにか力を振り絞って、3点ほど。
⇒まず日本が民主主義の中で、情報の分断方法を熟知している政治家、官僚、マスコミなどがセットになって、仮想的共産主義国家のような状況を作っていたこと。
⇒ところが、彼らが予想だにしないところで、例えば、そらのさんとUstreamの組み合わせによる事業仕訳ダダ漏れ、や、ツイッターと原口総務大臣の組み合わせによる、「信頼できるメディア」を中抜きするような重要情報伝達の実現、右翼集団とYoutubeの組み合わせ、など、自由な情報発信手段の発展で、それまで起こりえないことが起きて、これまでの情報管理体勢に綻びが生まれていること。
⇒結果、権威が信用できないし、新しいメディアは信頼性に欠ける。しかも景気は良くない。そんな混迷の状況の中で、少しでも新しい秩序を作ってくれるのではないか?という期待感で選挙は動く。そこに自民党も民主党もあまり関係はない。それが小選挙区制という得票率の優位が、議席に大きなレバレッジを与える制度による、小泉郵政選挙の圧勝であり、今回の民主党の圧勝劇だった。
インターネットが普及してきて、情報伝達が劇的に効率化され、そこに紐づいて、流通の仕組みや、税制や、お金の流れが変わってきた中で、「これまでの王道」から、少しつずつメリットがなくなっていき、新しい何かが、そのメリットを得て行くことは、なんら不思議ではありません。
もちろん既存の「信頼される会社」に従事している人たちは知恵を絞って、自分達のビジネスがどう最大化するかというのをみんなが考えるので、頭で考えるほど、旧体制がすぐに消滅することはないでしょうが、2000年の頃には、夢、妄想レベルだったものが、2010年には、政治の場やマスコミの場という、ある種」先端の世界に影響が出て来たということが、本書に描かれていると思います。また、同時に、ネットに集まりつつある新しいリスク、起きつつある問題点もまた無視できないところで、まさに「日本の今」を切り取った一冊です。