October 18, 2009
ビジネスは難しい。
単純に一過性でモノを売りたいのであれば値段を下げればよい。
提供する価値に対して安い値付けをすれば、価値を見出してくれていたけど値段が見合わないと判断してくれていた人に買ってもらえるかもしれない。
最近だと、高速道路1000円で沢山の人が高速道路を利用したり、エコカー減税の効果が報道されるにつけ、思っていたよりも遙かに価格反応度って高いんだ、ということを知った。僕だったら別に高速が1000円だからと言って、それ以上のコストがかかるようなことをしないというか、一番やりたいことを重視するタイプだが、どうも、せっかくだから、ということで人は動くらしい。
しかし、それを民間に適用すると売り手側が摩耗するだけで長続きしない。
やはり商品の本来の価値を感じていただいて、できるだけ高い値段で買っていただける努力をするのが大事である。
しかし、それが難しい。
ハーストーリーという女性向けのマーケティング提案を生業としている会社の社長が書かれた本を献本していただいた。
ダイヤモンド社
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賢く変化する「高度消費者」に対応できる「本質」がある
ハーストーリー社は女性向けマーケティングのコンサルティング提案などを行っている会社。
本書の事例としてあげられているものには、直接、主婦の方にイベントに参加してもらって、いろんなことを感じてもらったり、クチコミの源泉になってもらうという活動が紹介されていた。
ただ、本書にずばり書いてあるが、既存の「おいくら資源を突っこんでおいくらの売り上げ、利益を回収する」というビジネスのあり方からすると、断然回りくどいし、効果も見えにくい。
少なくとも、テレビCMに10億円つっこんで、量販店やコンビニ、スーパーを経由して数十億円の売り上げを上げるようなマスメディアを利用したマーケティングに慣れすぎた人たちからすると、ローカルな活動すぎると思うだろう。
しかし、それをやらないとモノは売れない時代だと、本書は語る。
モノ余りの時代では、商品の情報選択そのものが面倒くさい。本当に新しい製品は、その存在意義を知ってもらうのが大変だし、一定の市場規模を得たものは、隣にある商品との差別化要素を感じてもらうのが難しい。不感の時代。
さらにエッジすぎるオピニオンリーダーはオタクと呼ばれて、キャズムと呼ばれる谷が存在し、しばしば「スペックや機能だけの」と表現される、先端層だけがメリットを夢想できる段階では広がらない。
そこで、同じ目線で話ができるトレンドリーダーと言う存在が重要
同じ目線という浸透圧が同じ立場同士だからこそ彼らのポジティブな意見が幅広く広がっていく。
彼ら、彼女らがイメージできる「成功」を手助けできる商品が受け入れられる。
ツールとしては、なりたい自分になれる、それを利用することで何かに貢献できる自分、こんな素敵な生活を送ることができる、などと言ったイメージ。
このイメージを抱いてもらうことが大事。モノよりコトより、もっと先にある「成果としての自分」がイメージできること。
とはいえ、やっぱりこの成果は簡単には出ないだろうなと思う。
それこそ商品が市場に求められていない商品なのに、例えばblogやtwitterで担当者が頑張って行動したり、いくらイベントで人を集めてもクチコミに繋がるメリットを感じてもらえないし、まして大企業レベルのビジネス規模では、売り上げの寄与をもたらすのは難しいだろう。
小手先の作戦ではなく、もっとハイレベルな部分での戦略が共にあってこそ、なのだと思う。
時代にマッチした商品があってこその、マーケティング戦略であって、そういう商品がないのに頑張っても良い結果は生まれない。
今は無駄なものは買わないことが美徳になっている時代なのだから、単純に「良いモノ」ではダメで、商品提案、品質、価格、健康や環境への社会的役割などが絡み合って、「今」に心地よい商品が選択され、クチコミが生まれ、結果としてレバレッジが利く。
確度が低くても効果を上げたければ、入り口の規模を増やすことでカバーされる。ただし、それでは効率が悪い。効率が悪すぎる時代と考えられているからこそ、TV CMはピンチとも言われる。よってどうやったらローカルな活動で確度を上げていくかは、もう日常的に考えなくてはいけないことなのだろう。本書ではそれを「下から目線」と表現している。
本書は、twitterなどのソーシャルメディアでマーケティング活動を考えている人も読んでみると良いと思う。少なくともPRに使うのではなく、ユーザーと同じ目線でのクチコミの創出を狙いたいなら、ポイントとなる考え方は共通だと思うし。
twitterで、ものすごいシンプルなケースだと、沢山の人に、自社のビジネスに関連する話題がRTされるだけの魅力ある提案ができるか?というところに、その成果はかかっていると言うことだろうか。
どうもはじめまして。Twitter経由で参りました。
「謎作家」こと、イフリートの船沢(@Funaschon)と申します。m(_ _)m
> それこそ商品が市場に求められていない商品なのに、例えばblogやtwitterで担当者が頑張って行動したり、いくらイベントで人を集めてもクチコミに繋がるメリットを感じてもらえないし、まして大企業レベルのビジネス規模では、売り上げの寄与をもたらすのは難しいだろう。
>
> 小手先の作戦ではなく、もっとハイレベルな部分での戦略が共にあってこそ、なのだと思う。
>
> 時代にマッチした商品があってこその、マーケティング戦略であって、そういう商品がないのに頑張っても良い結果は生まれない。
>
> 今は無駄なものは買わないことが美徳になっている時代なのだから、単純に「良いモノ」ではダメで、商品提案、品質、価格、健康や環境への社会的役割などが絡み合って、「今」に心地よい商品が選択され、クチコミが生まれ、結果としてレバレッジが利く。
月並みかもしれませんが、この問題を考えるにあたっては、神田昌典氏や小阪裕司氏などの著書が参考になるかと存じます。
特に神田氏は10年ほど前からすでにこうした「モノが売れない」状況に警鐘を鳴らしていて、商品やサービス、あるいはそれを生み出す企業ではなく、商品やサービスを買って利用する「お客の感情」にフォーカスすることを提言しています。
最近では「顧客体験(カスタマ・エクスペリエンス)」などとも呼ばれていたりしますね。
中でも神田氏の『口コミ伝染病』(フォレスト出版刊)では、お客の“購買感情”から逆算することにより、「口コミ」の起こるメカニズムが分析されていてとても興味深いです。
それらの例に従えば、単にTwitterなどに商品名を羅列したり声高に連呼するだけではまったくダメで、「売り込み」を警戒するお客はかえって身構えてしまうでしょう。
それだけでなく、モノ余りといわれて久しい現代では、「欲しくないものはタダでもいらない」わけで。
だからこそ、えふしん氏の言うように、実際に買ってくれているお客と同じ目線で「こんないいことがあった」「こんな風に便利だった」「人生が変わった」「でもこういうのがあればいいのに」……と、商品に対する感情=体験を共有する必要があります(メーカーは往々にしてこの視点が欠けやすい)。
すなわちテクニック=戦術ばかりを弄するのではなく、お客の感情や心理を基にした、中長期的な視野に立った施策を考えないと、とてもWebで口コミを起こすどころではないでしょうな。
特にTwitterは、自社サイトやブログのように情報を一方的に垂れ流しにしたり、SNSのコミュニティなどで囲い込んだりするのとは違い、オープンかつリアルタイムな特性を持っていることから、その使い方を間違えると自社の信用を致命的なまでに損なう懸念があります。
たとえ本当にいい商品、いいサービスを売っていたのだとしても……。
それゆえに、
> 沢山の人に、自社のビジネスに関連する話題がRTされるだけの魅力ある提案ができるか?
という問いかけに答えられるだけの「商品力」を持たせなければならないし、また自分もかくありたいと思っています。
まあそんなわけで、今回の本は口コミマーケティングやニッチ・マーケティング、ゲリラ・マーケティングの参考事例としても、私もぜひオススメしたい一冊です。