March 21, 2009
先だって注意事項。この記事は僕の一人ブレストの文章なので、文章が冗長です。ブレスト的なエントリーは、僕自身が答えが出てないので、まとめる気もありません。特に、もし、はてなブックマークやlivedoorから訪れる人がいたならば、そこにお付き合いいただける興味や暇のある方だけお読みください。
音楽産業の現状は、カセットテープ、レコードからCDという長い歴史の中で、媒体に依存したモノ売りのビジネス形態になっているところから、いよいよデジタルデータ販売に移行しつつあるというのは誰しもが感じているところだろう。
以下のエントリーのはてなブックマークコメントから面白い資料のURLが貼り付けられていた。
はてなブックマーク - 音楽業界はどうなるんでしょうね - タケルンバ卿日記
にあった、
2008年音楽メディアユーザー実態調査 社団法人 日本レコード協会(PDF)
この資料にAIDMAFという、「認知」から実際にCDを「購入」し、その後「ファン」になるプロセスにおいて重要な要素は何か?というのをまとめている。
詳細は資料を見てください。
僕個人がこれを見て感じたことですが、
1.興味を得る入り口はTV番組やCMは見逃せない。
そりゃアーティストが突然、笑っていいともや、クイズ番組に登場する形でプロモ活動をしているのだから当たり前だな。
2.おそらくTVがきっかけでユーザー間の情報のシェアが行われ、そこで重要なのがYoutubeやニコニコ動画だと思われる。クチコミのリンク先がそこに到達していると予想。
3.アンケートだと「YoutubeがCD購入のきっかけ」ってのがあるけどさ、本当はその前に重要なきっかけがあるんないの?
本当のきっかけは、友達のメールとか、掲示板とか、僕等だったらtwitterだったりせんのかな?Youtubeを見て、これ良いね、CD買おうかと思うプロセスは、shareの受動的な面であって、一番大事なのは、その前なんじゃないかと思うけど、忘れられてる可能性はないのかな?
本当に、Youtubeが一番最初なのですか?
ニコニコ動画がきっかけってのはあるのかな。少なくとも僕個人では、ニコニコ動画のURLを知るのはmixiやtwitterなので、そこんとこ気になる。
4.ネットのWebサイトが音楽に向いていなかったというのが、とてももったいない。
商品系のプロモーションサイトで今まで以上に音楽を使うことは増えるかもしれないが、Webブラウザのメタファだとユーザーの評価は別れるので、RIA系の特集コンテンツ企画か、Youtubeやニコニコ動画と絡めた形でPRするのが現状は妥当。
5.視聴機とか、店員のPOPに対する男性の反応度って低いんですね。
この辺は、ウインドウショッピングを好む女性と、目的のものだけを購入する男性というよくある話に帰結するのかな。
するってと現状のネットで主流と言われる「検索を中心とした販売手法」は、一つの形でしかない、と考える方が妥当なのかも。しかし、現状の商品認知経路である限り、「いつでもすぐ手に入れられる」デジタルコンテンツ販売の優位は揺るがないだろう。
6.やっぱりアーティストのWebページは、新規のCD購入客獲得に、重要ではないようにしか見えない。
「F's Garage:AからZをぐぐってみる2」、というネタエントリーで、アーティストのページが沢山でてきたけど、カッコばかり意識してナビゲーションからして意味不明なサイトが多い印象だった。何より、「お前誰だよ!」という疑問に答えるようには見えなかった。結局、wikipediaを検索させてたら世話ないわけで。
基本的にアーティストのページはリピーターをターゲットにしたものだと思うので、AIDMAFのプロセスで言うなら一番最後以降の話。・・・が故に、Youtubeの隆盛を許したんじゃないの?
YoutubeがCD購入のきっかけになっている、という話があるのだけど、あの大量のゴミ動画がアップされてるYoutubeが一番最初の入り口とは思えないんですよね。
「いきなりYoutubeを探しに行く」という流れもあるとは思いますが、そのURLがSNSなどに貼られることで広がっていくというのはあるんじゃないかと思うのですが、マイナーアーティストであればあるほどWebサイトがちゃんと新規ユーザーの取り込みを意識したもので、shareするだけの価値のあるものあれば、わざわざYoutubeにいかなくても良いはずで。
まぁそこで音楽が全部アップできないよね、というあたりで単刀直入なプロモーションができないという音楽コンテンツの厳しいところがありそうですね。
MySpaceを活用しているアーティストは結構できてるような気はする。結局、CMSの問題だったりするのかな。
7.この認知プロセスである以上、音楽を一曲だけダウンロードする販売手法は理にかなってる。
理にかなってるが故に、CDが苦労する。
質の低いアルバムはおまけを含めた抱き合わせ販売。
あとCMに最適化された「その部分だけ良い」歌ってのも質の低下をもたらすね。
「最後の直線600mだけの馬」みたいな歌はダメだと思うよ。「よどみなく先頭集団で走りきって、直線しっかり伸びる」ことが大事。
コレ言うと怒られるかもしれないけど結構、サザンが提供してたCMソングなんかは、そういうの多かったような気がする。
8.「まとめとしてのCD」はありだよね。
「信頼できるお店で紹介されているコンピレーションCD」って実際、どれぐらい売れてるんだろう。
「カフェ・アプレミディ」のようなJazz系のコンピレーションCDが一部で流行った。カフェと名の付く通りカフェ・アプレミディは、渋谷にあるカフェの名前だ。カフェが先なのかレーベルが先なのかはわからないが、実店舗の存在が、ワールドミュージックのコンピレーションというわかりにくい存在に一本の柱を立ててるのは間違いない。
しかし、この作品で興味深いところは、流通の問題か、お店の棚のカテゴリ分けに問題があるのか「街のレコード屋」では売る場所がないのか、見つけるのは至難の技だった。若年向けの渋谷のHMVやタワーレコードでも不遇の扱いを受け、ネットで買うか、六本木ヒルズのTSUTAYAあたりまでいかないと良い扱いでは見つけられなかったというのが僕個人の観測範囲での感想だ。
その代わりにこういうコンピレーション系の商品がぴったりハマったのは、例えば女性向けの雑貨屋である「ITS' DEMO」やヴィレッジヴァンガード。こういうお店では、お店がそもそも持っているブランディング方向性とマッチしているので、心地よくCDを購入することが可能だ。つまり「CDを買いに行く」のではなく「そのお店に行く体験や文脈」ありきでCDという媒体にお金が支払われるというパターンだ。
こういうパッケージCDの価値は失われることはないのではないかと思われる。
最悪のパターンでも、温泉地の温泉まんじゅうみたいなビジネスは生き残る。自分へのお土産として。
同様の文脈で言うと、ライブ会場で購入するCDというのもある。「今欲しい」という欲求に対して、わざわざネットにアクセスしてダウンロードするよりも、その場で購入した方が合理的なケースにおいてCDは力を発揮する。携帯にどっぷり浸かってる人はその限りではないかもしれないが。
ここをデジタルコンテンツのスタイルで狙ってるのは、スタバと言われているが、席に座って音楽を聴かせるというスタイルがどこまで訴求できるかは興味ある。一時期、ファミレスの座席を置いて端末から有料コンテンツを販売する商売を見かけたが時間が経ったら消滅してしまった。カラオケボックスの情報端末が成功したという話もあまり聴かない。
接触機会が多ければ、広告として成り立つ的な概念があるようだが、もし直接売り上げを上げたいのであればという前提で、スタバはコーヒーを飲み、くつろぎながら勉強したり、友達とメールしたり、twitterやmixiに携帯からアクセスするところ。ファミレスは友達や恋人とご飯を食べるところ。カラオケは歌を歌うところなので、その文脈にそぐわないコンテンツがどこまで売れるのかは謎だ。
僕個人としては、ファミレスの端末で暇つぶしに占いコンテンツにはお金を払ったことがある。文脈としては合っていた。あとはそれが、端末を維持するほどの売り上げがあがるか?というところがポイントだろう。携帯コンテンツとの戦いでもある。
同様にカラオケも暇つぶし需要はあるだろうが、高度な情報端末であれば、如何に自分の気になる歌が探せるか?呼び出せるか?あたりにニーズが集中しそうな気がする。気の利いた端末であればアルバム名が載ってる機械があるが、そういうこと。曲名なんて覚えちゃいないけど、そのアルバムに載ってる全部の歌を歌いたいってのはあるもので。
それよりも携帯の赤外線から、自分のお気に入り曲リストを予約できた方がよっぽど便利だ。そこに金を出す程、興味はなくが、僕の場合はiPhoneでwikipediaを検索して予約することが多い。wikipediaは素敵すぎる。
と、話がすっかりずれたが、ユーザー別にはこんな印象。
◆「純粋に音楽を楽しみたい音楽マニア」
・MP3などの圧縮デジタルデータに比べて、媒体としてのCDの性能が優れているのでCDを購入するとか。
・でもこの人達はマニアなので、今のビジネス形態じゃ売り上げを支えてはくれないし指名買いの可能性が高いからアマゾンで事足りるのかも。
◆「TV CMに影響されて購入するライトユーザー」
・利便性重要なので、携帯の方が合理的。
・本データのまとめにある「ふらっと」立ち寄らせるのは大事だけど、いかにも携帯に負けそうですね。携帯が中心になっていったら、おこぼれに近い形になるのか一定の需要は残るのか、あたりがキーポイント。
◆男性
・買う物が決まってる人が多いみたいだから、携帯、ネット販売の利便性に傾倒していくと思われ。アテにできない。店員態度がどうでも良いという時点は店舗の利便性が生きておらず合理性主体ということかと。
◆店頭のPOPや、お店の雰囲気を重視する女性は脈あり。
・その提案をCD屋ができているか?がカギ。
・ヴィレバンやITS' DEMO、スタバなどの存在がどれぐらい存在感を増すか。
◆TV中心のプロモ以外を頑張ることでパッケージを売ることは可能
・効率悪いね。
・どうやって新規顧客を引き寄せるか?という戦略重要。
・もっと新規寄りにWebサイト頑張ったら?
以上のことを考えると、音楽CDのパッケージがなくなる必要はないが、流通の主役ではなくなる。
つまり、アーティストがTVなどでプロモして、その窓口としてCD屋でCDが売れるという楽なビジネスはネットに取って変わられ、CD屋そのものがいかにお客さんに提案ができるか?というビジネスに変わっていくだろう。
提案もせずモノを流通させるだけのCD屋というビジネスモデルは縮小を余儀なくされる。
その場合の流通は、別にコストの安いCDじゃなくてもUSBメモリやmini SDでの販売でも良いかもしれない。つまり、そのままデバイスやPCに刺せばそのままコピーができる媒体。
デジタルデータを販売店の側が曲を詰め合わせて販売するコンピレーションなんてのが生まれて、橋本徹さんみたいなカリスマ店員が育っていっても良いんじゃないか?視聴機と合わせることで、ネットで売るよりもメリットが大きいし、流通そのものは簡単だし。
その素地はヴィレバンあたりを見てると徐々に進んでるような気がする。Sotte Bosseはヴィレバンが6割の販売を支えてるなんて話もあるし、ヴィレバンオリジナルコンピなんてPOPもでてきた。(Essence Of Lifeは、25万枚も売れたそうな)
比較的薄く広く、売り上げ全体では増加していくという絵が理想的なモデルではないだろうか。
そもそもミリオンヒットがバカみたいに連発し始めたのは、小室哲哉やミスチル、B'zあたりの時代で、当時から、どう見ても異常視されていたので、それが終わっただけなのであれば、TVによるプロモを頂点としたCD販売の人気集中型モデルという一時的なトレンドが終焉しただけなのかもしれない。
単純にネットの流れに取るべき手がないのではなく、既存のビジネスモデルから新しいスタイルを模索していくことで十分に生き残っていく可能性はあるので、そんなに心配をする必要はないというのが印象である。置いておけば楽して売れる機会がネットにとって変わられてるだけ、のような現状に見えます。
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