January 18, 2009
構造的にアルバイトや派遣社員に求められる役割は、「そのタスクの遂行」だ。
競争の激しくない立地に恵まれたコンビニのアルバイト店員の接客態度が悪いことがままある。
何故か?
彼らの仕事は「レジを打つ仕事」だから。
本当は「お客様にモノを買っていただく」仕事なのだが、「レジを打つ仕事」なので、必ずしも接客態度は彼らの仕事ではない。
そんなことを言うと、
「何を言ってるんだ。お客様に喜んでいただくために努力するのは金もらってるプロとして当たり前だろ」
と言いたくなるだろう。
しかし、お給料が時給という固定給である限り、質が高かろうが低かろうがそんなにもらえるお金は変わらない。だったら、頑張る必要はないではないか。少なくともプロ意識なる解釈の成果はお給料には含まれていないので、あとは個人の感覚に委ねられる。
(故に優れたマネージャーの仕事は、ここをポジティブに解釈してもらえるようにすることだろう。)
あれ、それって何?なんかおかしくね?
チップ制が取られるアメリカは、基本の給与が低い代わりに、お客様へのサービスで独自にチップを得る努力を行う、と聞く。
お客様のハッピーと、働く人のハッピーが一致していて、それがお金というカタチで伝搬するからだ。
もちろんそれが常識化してくると、「チップはもらえて当たり前」とはなる可能性はあるが、より多くチップをもらう努力をする人は増えるだろう。
日本人は、お金に対する悪感情があるので、そういうのは「アサマシイ」という言葉で回避して、プロ意識などの精神論で解決したがる。本当にそれで良いのか?
派遣や社員という構造は、「仕組み」なわけで、仕組みは仕組みで解決すべきなのではないか?
ちなみに、「バイトが頑張らなくても良い」のに、お客様が集まってモノが売れ、仕入れが枯渇しないのもまた「コンビニのフランチャイズ」という仕組みが実現していることである。
ところで、
・社員と同じ仕事をしていて何故派遣だけが切られるのか?
という言葉がある。
ニュースを聞いて驚いたのだが、国内自動車会社12社のうち6社が非正規雇用の社員数がゼロになるそうだ。その数、2万3千人
「このタイミングならやれる」というものなのかはよくわからないが驚くべき数字だ。
しかし、実際は社員と派遣では、そのタスクを身につけた先に担う「期待の意味合い」が全然違うわけで、そういう批判をそのまま受け取ってはいけない。
結局のところ、社員のあるべき姿である「優れた社員」に期待するのは、その場を統率していく役割や、より会社を大きくしていく仕事を自ら作り出すことだ。原則的に、今やっているタスクは常に中間地点であるべきだ。
クルマの雑誌を立ち読みしていたら、こんなことが書いてあった。
フェアレディZの新車発表会で、記者が聞いたらしい。
「何故、この大変な時期にこのようなクルマを出すのだ。それに意味があるのか?」
と。
いやいや、ちゃんと製品を出して、売り上げを上げていかないと次に切られるのは社員でしょ?
主要産業である自動車会社が「不景気だから何もしない」になったら日本が減速するだけなんですけど。
それでも、どうもそもそも自動車が売れなくなってきた昨今、今後社員がリストラされていくことは当然、ありうるのだろう。
少なくとも、この問題の解決法の先に、雇用の流動性確保のために社員を保護することをやめようという流れになった場合には、派遣だ、社員だという概念そのものが無効化されていく可能性がある。
しかし、そこで切られてしまう社員というのは、今やっているタスクの意味を理解していない人であろう。
つまりその会社のビジネスを大きくするために、どうコミットして行動しているか?
今のチャンスを生かして先を見て、自分のフィールドを少しでも広げようとする努力をすることが、社員としての存在価値であり特権とも言える。(もし余力が沢山あるのに、仕事を任せられないなら環境を変えた方が自分のためかもしれない)
そのチャンスを生かせない社員は次に切られてしまうことになるだろう。
もしその社員の評価が、「派遣と社員と同じことしかやってないじゃないか」と言われる文脈で片付いてしまうなら、単純に維持コストが安い方に流れた方が良いわけだし。そこが労働基準法で保護されているから手をつけられないだけで。
その保護政策が決壊するタイミングは刻一刻と近づいているのかもしれない。(もちろん、そうはならないかもしれない。)
あと最初のコンビニバイトの件だが、雇用が維持されることそのものが本人にとっての重要な働くインセンティブになってない現状は、まだまだ日本の現状は不景気ではないのではないかと思わん限りだ。理想論かもしれないが。
結局、立ち位置も大事ということか。まるで士農工商の身分制度にいるような気がする。日本の政策の考え方では、実力主義と言う言葉は煽りの言葉でしかないのか?!まだまだ難しい世の中だなぁと思う。
「仕組みに飼いなさられるな」とは、この文脈に限らず思うことは多い。
(もちろん所詮、僕もロングテールの途中にいる一人であることを自覚した上で。)
いずれにせよ自分の立ち位置を確保するために常に攻めの姿勢でいきたいものである。
守りの姿勢になったところで、その地位が確保される保証はどこにもないのだから。