January 17, 2009
今までの日本のネットはリアルと切り離されている。
ネット上で企業のblogやキャンペーンが炎上しても、実際の企業の売り上げが下がることはほとんどない。ようやくネット対ネットという流れでは若干問題も出始めたかもしれないがネット対リアルは別だ。
しかし、もしかしたらそれも変わりつつあるのかもしれない。
というのも、何世代目かわからないが、かつてあった「とりあえずホームページでも作るか」という会社が再び増えているのでは?という話を聞いた。
僕等ネットに慣れすぎた人たちは、もう「とりあえずホームページを作るか」と思う企業担当者は絶滅したと思っているが、実はそんなことはないのではないだろうか。
だから、Flashの目的などを考えるところまで頭が及ぶことなく、「かっこいいからFlashにして」「意志決定者に納得させるには見積もりがあがってもFlash」などという2000年以前のようなノリが、今でも存在すると聞く。
世の中はまだまだそんなもんだ、ネットのプロはすぐに意味や目的を考えすぎだ。
しかし、そんなユーザーがネットに興味を持った人が徐々に増えているかもしれないことは無視してはいけない。
単純にカッコイイものが売れるのであれば、カッコ良さを加味した上で、サイト利便性を失わないFlashを作ればいい。
そして、Web2.0なんて考え方は先の先に走りすぎている。
そんなもんだと自覚すべきかもしれない。
「グランズウェル 〜 ソーシャルテクノロジーによる企業戦略」という本がある。
翔泳社
売り上げランキング: 1442
ソーシャルテクノロジーを理解する一冊
この本は、企業がblogやSNS、その他ソーシャルテクノロジーを生かして、ユーザーとどうやってうまい関係性を作っていくか?について言及した本だ。
グランズウェルという聞き慣れない言葉は、「大きなうねり」という言葉で、いわゆる群衆の知であったり、CGMであったり、クラウドなどと言った言葉に似ている。
クラウドがネットに繋がる無数のコンピューターやストレージの事を表すのに対して、グランズウェルは、ネットに繋がる多くの人間の意志や感情の集合がもたらす動きのことを表している。
「ネットに繋がる多くの人間」と考えると、とても雲を掴むような話に見えるが、コミュニケーションのアプローチのために、まずユーザーの種別を分類している。
・創造者
・批評者
・収集者
・加入者
・観察者
・不参加者
という括りだ。
これはとてもわかりやすい。マーケティングの世界には、キャズムやアーリーアダプターと言ったユーザーの興味の度合いによる分類があるが、この考え方がネットに即していないのは、アーリーアダプターとレイトマジョリティは決して同じ時間に同じ場所にいるイメージがまるで沸かないことだ。
グランズウェルのアプローチは、商品の流行サイクルによる分類よりも、一歩踏み込んだところでユーザーを分類している。それがアーリーアダプターであろうが、なかろうが、創造者や批評者がコミュニティを引っ張り、収集者や観察者が全体の数を構成するという考え方だ。
そう考えると、いきなり全体を狙って何かをするのではなく、まずはターゲットとして狙いを定めるところが見えてくる。
あとは商品やサービスによって、何をどうしたら最初の創造者や批評者がついて、そこから加入者、観察者が増えていくかを考えていくというスモールスタート型のアプローチが見えてくるだろう。
それにより過剰なサービスで離陸しないなどと言ったことも避けられるし、担当者も大きすぎる期待を持たずに済む。
本書でひかれた部分として、
・魅力的な商品においては、ブランドは「コミュニティ」を象徴している
・直接的な売り込みがユーザーの反感を買うようなデリケートな商品は、そこに隠されている問題を解決するようなコミュニティを作る。
というあたり。他にも、単純に成功でもなく失敗でもないような事例も記載されているので、単純に役立つし、思考の整理に向いている。
この本を読んで欲しい人としては、
1.Webに対してまだまだ無理解、未経験な顧客と対面する受託Web制作者
2.”グランズウェル”に向けて企業のメッセージを伝えたいと思うWeb担当者、経営者、上司。特に上司、経営者に読ませたい。
3.こういう本を読んで、「そんなの俺たちにとっては当たり前のことじゃん」と考える、ネット経験の長い人達。こういう人たちは自分たちがいかに特殊な世界、かつ、未来の世界に生きているかを再認識するべきだ。
ネット系企業で働く人たちは、もうインターネットはほぼほぼ発展しきったと考えているところがある。確かに「既存ネットユーザー」がそんなに増えておらず、かつ可処分時間に限りがある以上は、その見方は間違っていない。
しかし、僕はまだまだネットは未開の地だと信じている。
それがビジネス上ボロ儲けできるぐらい、ネットバブルが再来するかというとそんなことはなくて、現状は、SNSにアクセスしてコミュニケションすることも含めて、さまざまなことが安くできるようになっているわけだから、裾野が広がっていたとしても、同じ事をやっていて大きな儲けが得られるとは限らない。
しかし、ユーザーニーズとしてベーシックなところでは、新たにユーザ層が増えることで「あの時と同じブームが再び起こる」と言う現象もまたこれからも出てくることだろう。
もしくは、「あの時は波が来なかったけど今ならイケる」ということもあるだろう。2002年ぐらいに韓国からやってきて全く流行らなかったアバターが今、携帯でイケているのはまさに象徴とも言える。
そこを「悪しき経験論」で可能性を潰さないように気をつけたいところだし、何より本書を何度も読み返すことで、自分たちが辿ってきた足跡は一体何なのだろうと整理した上で、改めて、ユーザーとコミュニケーションして、自社のビジネスに生かしていくかということを再認識していきたいところ。
この記事を読むような人は、間違いなく先に行きすぎなので、ちょっと世の中がついてくるにはどうしたら良いかを考えた方が良いと思う。
翔泳社
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ソーシャルテクノロジーを理解する一冊
うん、この本は良かったですね。
いくつか日本向けに直したほうがいいかなと思う点もあったけど、ほぼ同意でした。
レスありがとうございます。
デルの事例がありましたが、この話は、別の本で、その活動が必ずしも売り上げにつながっていないと言う評価を読んだことあります(ビジネスアスキーだったかな。。)
グランズウェルという言葉は結構壮大だと思うので、地殻変動のように影響が出たら良いなぁとは思います。
デルの売り上げ規模では、優秀な営業マンが一人二人いるぐらいの改善効果だったとしたら影響は見られないでしょうから、その感動がどう広がるか?あたりなんでしょうけど。
前に記事を書いてたようです。
http://www.milkstand.net/fsgarage/archives/001454.html
Amazonで200円とか書いてありました。
(雑誌そのものが手元にあったのですが、年末大掃除で消えてしまった模様で、お貸しすることができませんです。><)