September 14, 2008
CEATEC JAPANというイベントについてのブロガーイベントに行ってきた。
CEATEC JAPANとは、歴史のあるエレクトロニクスショーなど、複数の展示会が合併してできたIT・エレクトロニクスの総合展示会とのこと。
馴染みのあるITから、それの生産を支える部品や生産技術やコア技術にもフォーカスされている幅広いイベントだ。僕が最初に入った会社は生産装置を作って、電気メーカーや自動車会社に販売する製品であるが、その時の競合会社も出展している。
出展者の目的は、B2Bのプロ向けと、コンシューマー向けの両方を内包しているところに、このイベントの面白さと難しさを内包しているように思える。
CEATECは、2000年から開催されたイベントだそうだ。僕がネットの世界に来たのが2000年なので、その歴史が印象的だった。
ちょうど2000年に、ハチ公交差点にあるQフロントにデジハリが入って通っていたころ(要はネットバブル絶頂期だ)、デジハリで言われてたことは、やれIMT2000(3Gのことね)で、携帯定額制によるブロードバンドの世界が来るだの、スクエアが作る仮想空間が、今のセカンドライフよりもすごいことになってるんじゃないか、とか、そんな話を当時ADSLも普及していないISDNな頃に話をしていたものだ。
あの頃イメージしていた進歩は全然できていなくて、特に技術の進歩よりもビジネスの進歩は歩みが遅く、当時言われていた「ドッグイヤー」とは思えないような進捗状況。
またインターネットがもたらすとさかんに言われていた「中抜き」は、世の中はアテンションこそが重要で、それを得ることが何より難しいということが見え始めてから、センセーショナルな変化はもたらしておらず、ボディブローのように徐々に変化ををもたらしつつも、レガシービジネスとの共存を果たし、ライブドアの堀江元社長が大きく目立つ世の中になって、一旦終わって、Web2.0というボトムアップの流れが注目されて、さて次はどうなるんかなー?というのがイマココ。
携帯電話なる高機能通信デバイスを誰もが持ち歩く時代になり、産業の中心が、生産性などという製品の価値を定量的に判断できた時代から、広告、エンターテイメント等という、わかりにくい価値がITをベースに世の中を闊歩する時代になっている。
イベントの中ではCEATECの歩みが説明されていたがにそこから注目すべき技術のスライドから気になるものをピックアップしてきた。
■2000年
BSデジタル、FPD
Bluetooth、デジタルレコーダ
■2001年
有機ELディスプレイ
e-japan、eコマース
W-CDMA,cdma2000
■2002年
ブロードバンド
■2003年
デジタル家電、ユビキタス
PSXを発表
地上波デジタル開始直前
■2004
SED、Blueray vs HD-DVD
■2005年
RFID , Felica搭載携帯
ホームネットワーク(DLAN,PLC)
ムラタセイサク君
ここからキーワードを「デジタルコンバージェンス」
■2006年
HD化
ナンバーポータビリティ
ワンセグ
日産自動車初出展
■2007年
有機ELテレビ発表
超薄型液晶
■2008年
NGN商用サービス開始
WiMAX商用サービス開始直前
NHKアーカイブス再送信開始直前
洞爺湖サミット
今、CEATECがテーマとしているデジタルコンバージェンスとは、
プロダクトがデジタル化して、ネットワークにつながりプラットフォームとなる。そこにサービスやコンテンツが乗っかり、利便性や豊かさを提供する。
ということで、日本の産業がハードウエアからソフトウエアにシフトしてくるのではないか?という状況のことを指している。
僕は最初に入った会社では、生産装置の電気設計、制御ソフトの開発、UIの開発をやっていた。
ソフトウエアなんてものは、元々ハードウエアを動かすために下支えするように存在していた。その装置にWebサーバーを載せてモニタリングしましょうなんて装置の特許を出したものだが、その先が一装置メーカーでは提案できなかったのだが、今はもっと視点が変わってるのかもしれない。
当時は、・・・きっと今もまだ・・・、ハードウエアを販売する「オマケ」として取り扱われていたのが現実だろう。モノを販売してお金をいただく人たちは、ソフトウエアを個別開発するのに人月60万とか80万を支払うのをためらう傾向があるように思える。自分達が個別対応していたとしても、モノに載せているマージンからお給料が支払われているのに気がついてないからかもしれない。
それがコンシューマーエレクトロニクスを中心に段々、ハードウエアを販売する競争力としてソフトウエアが重要になってきたため、こう言われるようになったのだろう。産業装置もコアのプログラム以外の、周辺のソフトウエアが付加価値として必要になれば、もっと変わってくるだろうが、現状はどうなのだろうか。
利益率の高いラーメンを売るのに、どこまで餃子で客寄せができるか?というのが、元々のソフトウエアの位置づけで、さらに今は接客や店舗設計などの「おもてなし」を司るのが、GUIなどに見られるソフトウエアの役割とも言える。
その究極とも言えるiPhoneにいたっては、何個かのボタンとタッチパネル以外は全てソフトウエアでその商品価値をコントロールしている。
しかし、CEATEC全体としてはそうなってない分野もあるだろう。
コンシューマーとB2Bが融合した展示会として、今後、一番成果を期待するならば優秀な学生へのアピールの場というのはあると思う。要は産業を下支えする地味な会社をPRする場である。携帯電話やインターネットによるエンタメやblogなどで、Adsenseやアフィリエイトなどを通じて、お金が動くことを知ってしまった学生に、純粋な物作りの楽しさやプライドを知ってもらうためにも、やはり「おもてなし」としてのソフトウエアは必要なのではないか。
この場合の「おもてなし」とは、未来を語ること、未来を見せること、未来を考えているんだよということをアピールすることだと思う。
今回のCEATECの目玉イベントとして、ライフコンテンツフロンティアという企画があるそうで、経済産業省が定めたコンテンツ技術分野のロードマップにあわせて、普段目につかない企業も含めた9社がデモを行うとのこと。プレゼンのメモを引用しておくと、
エンターテイメントだけでなく、生活の中のインターフェースになるコンテンツがあるのでは?表現したい情熱があるんだけど、ノウハウがない・・・・制限がある、・・・老人など・・・自分の思いを表現していく
移動・交通・モバイル
地域・観光地
住まい・家庭
街中・施設
学校・会社5つの生活シーンを想定した新しいコンテンツの役割
こんなテーマで発表されるらしい。
経済産業省がここに肩入れしているのも「時代の象徴」なのだろう。成功しようが失敗しようが、きっと数年後にそんなことを言ってそうだ。
それはさておいて、ものづくりをしているエンジニアの鼻息はいつの時代も熱い。
今回のイベントで、ヤマハの人たちがCEATECで発表する新製品や新サービスについてのちょっとした紹介をしていただいた。
そのコンセプトだけでグッドデザイン賞を受賞した「テノリオン」を筆頭に、人の動きに併せて、適切な店舗の音楽を流す「BODi BEAT」という製品や、VOCALOID2のサーバサイド化、そして、個人向けWEB api提供の話など、ハードを生かすソフトウエア、ソフトウエアありきのハードウエアが、その製品の熱意を持って紹介していただいた。
こういう「作り手の思い」というのは理路整然と整理されたカタログや、それを取り扱う記事(無論この記事も)からは伝わってくることはない。必ず人のフィルターを通して劣化しているからだ。
そういう作り手の思いを感じるための一つの手段として、CEATECなどのイベントに参加するのは一つの手だろう。
インターネットを介して、情報時代は簡単に手にいられる時代になったからこそ、その情報を深掘りするために、実際にイベントブースに立ち寄って、思いを確認してくるのが素晴らしいし、ネットに出ているカタログ情報以上の何かを伝えられないイベントに存在意義はない。
今回のCEATECでは特に「ライフコンテンツフロンティア」などの企画を通じて、「作り手の思い」を伝えようとしている。特に普段表舞台に立っていない企業が「ライフコンテンツフロンティア」に参加しているのが興味深い。そこにはIPがもたらした恩恵は大きいはずだ。例えば、デジタルサイネージなんて言葉が最近ホットになりつつあるが、要は街の看板屋の仕事であったりもするわけだ。IPを通じて、当たり前に存在する仕事や価値が再定義されてリフレッシュされている現状と言える。
そういう今を切り取り、何かを感じ、そこで出た質問を、直接聞いてくる貴重なチャンスと言えるだろう。
参考資料:
CEATEC JAPAN 2008
開催期間は、9/30(火曜日)〜10月4日(土曜日)
事前申し込みで無料になったり、業界ニュースが載っていたりと、イベントの前から楽しめる出展社情報ポータルになってるようです。