September 07, 2008
僕の叔父さんは、建築の仕事をしていて、壁や扉など木で作られた「建具」を、現場で組み込む作業をしている職人さんだ。
イマドキの言葉で言うならフリーランスの技術者。やってることのモデルはWebのコーディングなどの仕事とそんなに変わらない。
最近のマンションのような大量生産品では、簡単に建具が組み込めるように、工場で作られた規格品を簡単にハメこめるようになっているらしく、職人の建具屋さんが手で組み込むような仕事はなくなっているそうだ。
ということで一般の案件は顧客対象ではなくなり、今、叔父さんのターゲットとなるユーザーは、設計士が家を一から設計するようなハイエンドの案件に限られているようだ。
そんな叔父さんが、今チャレンジをしているのが、独自のノウハウを用いた技術を如何に広めるか?ということをやってるらしく、たまに、その成果物が送られてくる。
今回送られてきたのが、ペーパーウエイト。
英字新聞のところに、犬や子供の写真を挿入して、実用的なフォトフレームとして使えるところがポイントだそうだ。
僕としては親戚なのでうまく行って欲しいと思いつつも、やはり技術を売るのであれば、その技術が最終製品の機能や商品性と直結していなければ売れることはない。
この技術が他の同種の製品と比べて、どういう優位性があり、かつ、何の役に立つのかがよくわからなかったので、その技術のポイントを聞くべく電話をかけてみた。
叔父さんの技術のポイントは、斜めに入った「桟」の役割をする木と、その加工、生産技術にあるらしい。
こうやって斜めに入れることで、接続された木と木が強い強度で保たれる。
以前、送ってもらった椅子のてっぺんを撮影したのが次の写真である。
本来、一枚板で作るべきところを、小さな板を斜めに入った棒でつなぎ合わせることで、一枚板の役割を持たせることができるという技術だ。
椅子の全体像はこんな感じ。
今は、物の台に使ったりしているが、とても丈夫なので、電球を変えるときや、本棚の高いところの本を取るのに、これが思ったより重宝している。
丈夫なので安心感があるのと、木の柔らかさがあるので、周りに傷をつけにくいというのがポイントか。この斜めのラインに美的商品性が認められると、その製品性もあがるというものだが。
話を聞くと、最小限の塗装しかしていないのと、接着剤を工夫することでアトピーなどのアレルギー体質の子供がいるような家に良いのではないか?という話もあった。ただ、そこはそんなに商品性にしているわけではなく、今のところ「それもできるよ」という状態。
また、箱として作られた物がこれ。
丈夫なところがポイントなので、台としても使える。が、なんというかプラスチックと比べて重量は軽くないので、何に使うか?が重要。
叔父さんは、子供の頃から可愛がってもらった人で、僕が今の僕にあるのも子供の頃からパソコンやゲームを買ってくれたからだ。そんなところも含めて、是非頑張って欲しいし、できることなら恩返しをしたいところなので、これがどうやったら売れるのか?というのを考えてみたが、なかなか思いつかない。
電話で聞くと、このノウハウは、簡単にはおおっぴらにはできないとのこと。ある程度はノウハウをコントロールしたいらしい。
オープンソース時代はノウハウを公開、共有することでオリジナルを考えた人の知名度があがり、より前に進めるようになるというのはあるが、それはインターネットらしい時代の考え方なのか、普及させるためにはノウハウを開示しなければダメじゃんと言うと、拒否反応を示される。
それでは、もしノウハウを自分だけのものにしておきたいなら、最終製品が世の中に評価されるような提案をしていかなくては、その情報は広まっていくことはないのだが、そこでいろいろ頑張っているのが、冒頭のペーパーウエイトに繋がってくるらしい。
ただ、「わかる人にわかって欲しいから頑張る」に対して、適切なリーチができてないというのが現実だ。
それ以前にノウハウが開示されていないでクローズドになっているのに、誰かのニーズに頼るのでは、その技術の魅力を理解したり、応用例を考えられる人は存在しないというジレンマに陥ってしまう。
せめてそれなら、と、美大生が応募するような何か審査されるようなイベントに応募すべきでは?という背中を押した。(って、どんなイベントがあるんだろう?!)
謙虚な職人は、プライドや自信を持ってるのに、自己を低く見ようとする悪い癖がある。
これは古い職人だけじゃなく、イマドキの若いプログラム開発者にも見られるので、職人気質というのはそういう特性なんだと思う。
KY力を発揮しすぎて前に出て行こうとしないが、大量生産品企業に支配されている埼玉の片田舎で地味な活動をしていても、特殊な技術を求めるような人に出会うハズがないと思う。
そこは空気を読まない力で、もっと前に出て行って欲しいので、とりあえず甥っ子として、インターネット時代に積極的に前に出ている若者達を見習って、とにかく展示会に出すようにとお願いしておいた。そちらの方がいくばくか確率が上がるハズ。
実際やるかどうかは知らないし、実際評価されたり、世に求められるのかは正直よくわからないが、多少なりとも背中を押すことができて、一歩前に出るきっかけになればと思っている。
そして、コダワリとマーケティングのミスマッチ、そして過剰に空気を読んでしまうところ。僕自身がそうならないようにという強い自戒の念を込めた話だったりもする。
もし、こういう技術や製品に興味がある人は、f-shin[at]milkstand.netまでご連絡ください。
([at]は@に置き換えてくださいね)
こうしたら良いよーみたいなのがあったら是非、なんかコメントなどをください。