June 14, 2008
CSS nite shuffleに切込隊長と住さんのお話をお伺いに行って参りました。
というのも、タイトルが以下のような内容だったからだ。
住 太陽×切込隊長トークバトル 「Web衰退時代をどう楽しむか」伸び盛りだったWebも成長速度を弱めはじめ、企業の予算の流れにも翳りや偏りが明らかになり始めた。しかし、Webがもっと楽しめるものになれば、可能性はまだまだ大きいはず。業界内外の現状とこれからについて、独特の立ち位置で業界内を泳ぎ続ける二名、切込隊長山本一郎氏と住太陽が語る。
5月にネットレイティングスから2001年以来初めてインターネットのPVが減ったという話が流れたのはご存じのことだと思う。
インターネットは拡大しPVは伸び続けるものという大前提で成長曲線を描いていた人からすると足下を揺るがすような嫌なニュースと言える。
Web 総利用時間が18%増、総ページビュー数は3%減~ネットレイティングスが発表 - japan.internet.com Webマーケティング
ネットレイティングスの見方としては、Ajaxによるページの効率化やニコ動、Youtubeなどの影響で動画を見ているからと言う話だが、そんなにAjaxが流行っているというイメージはないし、みんながニコ動、Youtube見てるんですか?という印象もあって、にわかに信じがたいイメージはある。ただ、Webの総利用時間は増えているそうなので、そこがAjaxなどを持ち出す根拠と言ったところだが、実感がわかない。ニコ動とYoutubeと、それ以外のWebサイトでわけてみたら、総利用時間が動画サイトに明らかに偏っていたりしないのだろうか。
実は丁度、このニュースを聞く前後に、人の話を聞いていて思ったのが、実は草の根レベルでWeb制作の仕事が減っているのではないだろうか?という疑問が出てきたところだった。
と言っても全部が減っているのではなく、付加価値を持っているところは全然問題ないのだが、それまでのオーソドックスな制作案件が減っているのではないだろうか?と言う疑問だ。
それについては、いろんな人にそれとなしに話をしてみると、CMSが導入されて更新が簡単になったことや、企業内でのWebの位置づけが高まったおかげで、社内にWeb担当者を抱え、元制作会社のディレクターなどが入社することで、プロダクションに頼まないケースが増えてきたのではないか?などと言う答えが返ってきた。
そんなことを考えていた矢先のこのイベント。切込隊長の話で出てきたものをまとめると以下のような内容だったように思える。主に広告の話ですが、企業のWebサイトを構築する際にも適用される話だと思います。(間違ってたら指摘してください。)
・効果の質の違うWebに対して、他のメディアとの比較が難しい。
・Webへの動線は検索エンジンではなく、TVや雑誌広告。ファーストメディアではないWebに対して評価は高くない。
・Webで実現できる人数規模では、タレントを使ったCMに効果で勝てない。
・仮にWebで成功とみなせる成功例が出ていても、正しく効果測定できていないため評価ができない。
・そんな理由などから2008年下期のWebの広告予算は減る見込み。
・・・のような話だった。
また、広告を支えていたサラ金の衰退の影響も無視できないとのこと。
今日の話も出ていたが、「とりあえずWebサイトを作りましょう」というニーズが終わって、更にWebサイトを生かしていこうというクライアントと、別にもういいやと、数年前のWebサイトで満足してしまっているところに別れるので、継続的関係を結んでいる制作会社、制作者に新しい案件が集中するというのは、割と単純に予測できること。
市場の伸びを前提に「常に新規で、手離れ良く」で、毎回高いリスクを負いながらもイニシャルコストという高い売り上げにのみ依存してきたところは、継続的な関係を続けるコスト構造やノウハウがなかったりすると、淘汰されてもおかしくない。
というかそれだと毎回同じ事しかやらない可能性が高いのでスキルが上がらないですよ。
そうではなく、アクセス解析なども活用し、ランニングコストの予算を上げられるような長期的な関係でwin-winになれるような努力(我慢)ができるところは、経験値を積み上げた改良案件などを経験することでスキルが貯まっていくというのはあるだろう。
Webサイト構築時にやれることと、サイトが運用されてからやれることってのは違いますしね。実績を積み上げることでできることってのは増えていきます。そこで効果的な施策を提案して実施して、効果測定して、また次の提案ができるってのは重要なスキルだと思います。
さて、売り上げとして見たときのWebが若干衰退気味だったとして、そういう状況に対してどう生きていくか?という質問に対して切込隊長は、shuffleの最初にプレゼンしていたカヤックさんの事例を持ち出し、お金だけではない価値やおもしろさを追求したら良いのではないか?という提案されていた。
ただ、カヤックさんも収益源は受託らしい。もちろんこれだけブランディングしていれば面白い案件というのも優先的に舞い込んでくるとは思うのだが、全部が全部そんなハズはなく、そうではない仕事もやっていることだろう。というか実際の収益源はなんてことない普通の仕事だろう。収益の還元、投資サイクルに「面白いこと」がある(ここ試験に出るから)
即時に誰かのお役に立てるわけではないから「面白いこと」なわけで、面白いことをやり続けるためには、きっちりとお金を稼いでいくことは欠かせない。(追記:改めてWebサイトを見てみると受託業務は関連会社のCUPPYの方でやられてるとのこと。適切な情報はカヤックさんのWebサイトを見てください。(見てて飽きません))
さらに追記:
なんか他社の話で、いい加減なことを書いてないか不安になってきたので、裏付けを調べています。こちらもどうぞ。
41:「受託開発と自社開発の両立」:柳澤大輔「面白法人カヤックのいきかた」
ここから広告の話を書きたいと思う。ここから先はイベントとはほとんど関係ありません。エッセンスは抽出してるかもしれないけど、ぼく個人の展開です。
広告には、大企業の広告案件で広告代理店がコミュニケーションデザインを行い、アテンションを適切に確保してお金をいただく広告ビジネスがあって、それはそれで別に良いんじゃないかと思うのだが、もう一つ、Google AdsenseやOvertureなどが代表的だが「PVだけあれば広告ビジネスが成り立つビジネス」というのが、僕にはどうしても解せない。
例え適切でなくてもコミュニケーションデザインの設計や、文脈にそった広告の提示というのは必要だと思っている。そもそもそこに訪れている意味をちゃんと見いだす形で、媒体として選ばれることも重要な要素であろう。
確かにほんの一部だけPVを集中させることに成功したところはものすごく儲けられるようだが、効率の悪いスタイルが、株価何十万もつくようなビジネスとして健全だとは思わない。
そもそも広告効果がものすごく低いんじゃないかと思う。
実際、強大なPVを稼いでいるところは広告単価が破壊的に安いとの話も聞く。つまり在庫が沢山あるから単価を下げても数百億円ということなのだろうか。本人達は儲かってしかたがないが、そこで破壊的に壊されていく広告業界というのも存在するのではなかろうか。
実際は、なんの文脈の提示もできていない広告ビジネスで広告効果が得られる職種というのは、電車の中吊りや電柱の広告と同様、利益率が高い限られた商品に限られるんじゃないかと思うのだがどうなのだろう。
まぁぐるなびが、交通広告の会社が母体だったことを考えればインターネットってのはそもそも電柱の広告モデルがもっとも効率よく適切だということなのかもしれない。
確かにAdsenseやOvertureのビジネスモデルが素敵すぎて、それに習えばお金がもらえるという事実はあるのだから、お金がもらえるうちはもらっておけという話なのかもしれないが、それだけがインターネットの代表的な収益モデルだと思いこんでいたら、ある日ぱったり途切れて死亡なんて日も来てもおかしくないような気がするので、身も心も現状に依存するのだけは避けたいと思っている。
と言っても、僕にはよくわからんってのが正直なところで、しかし、広告だろうが直接課金だろうが、手数料課金だろうが、ビジネスに王道はなくて、やっぱり適切に与えた物に経済原則に基づく対価をいただくという発想は不変だと思う。
そもそも広告ってのは間接的な商品販売のことだと思う。
適切なギブアンドテイクの関係を作ることに努力しなきゃいけないという、その原則はついて回るべきだと思っておきたいと僕は思っています。