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藤川真一について


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May 25, 2008

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最近、特許と言う言葉と無縁の仕事をしていて、ちょっと寂しいえふしんです。

そういえば、今やってるECのような仕事って、特許を取って何かを革新しようというのではなく、世の中に存在するニーズをいかにうまく掘り起こして、文脈として提示してあげるか?!みたいなところの表層の部分を生業にしてるから今のところ特許とは無縁。

もちろんコアテクノロジーは、素敵すぎるノウハウの固まりによってできたオープンソースの技術に依存しているからこそ、表層にこだわることができるという意味で、本当に面白い世の中とも言えます。

ただ、オープンソースになってしまうが故に、ひたすら製品だけを開発する仕事でいられれば会社としてエンジニアを続けられる世の中ではないのも事実。それはそれで楽しいだけに、ちょっと微妙。

と、久々に特許の話に触れられたので、セミッターと昨日のWebSigの話題も書かずにこっちを先に書く。

特許はとればいいってもんじゃない。発明はすればいいってもんじゃない - shi3zの日記

たまに、こういう人たちに限らず「ビジネスモデル特許を取得してます」などと言って売り込みをしてくる人がいるけれども、そもそも特許というのはそれほどいいものではないのだ。嫌がらせにはなっても、それに値段が付くほど凄い特許というのは、成功した製品とセットでなければならないのである。

ビジネスモデル特許って、一時Buzzってましたが最近はほとんど聞かない。が故に、あまり理解してない人も多いのではないだろうか?!

(特許については当然素人ですが、製造業で開発やってたので何点か出願したことがあるという経験レベルで偉そうに書きますので、間違えてたら、コメントでもメールでも、はてブでも良いので是非、ツッコんでください!!僕が賢くなれるので、正しい指摘なら大歓迎です。)

ビジネスモデル特許についての詳しくは下記のエントリーを参照していただくのが良いと思います。

ビジネスモデル特許について

非常に平易に説明されていますが、それでも特許慣れしてない人には漢字が多いあたりで、ちょい難しいので説明できる範囲で説明します。(このエントリーが劣化コピーと指摘されたら消すかもしれませんということを先に書いておきます。)

ビジネスモデル特許ってのは、上記サイトから引用すると、

ビジネスの方法をITを利用して実現する装置・方法の発明に対して与えられる特許

です。特許に親しみがある人はこれだけで、なるほど大したことないな!、ということになります。

そして、

 ビジネスモデル特許は一般的には情報処理部分に特許性があります。従って、ビジネスモデル特許はソフトウエア特許の範疇に入ります。

ということ。


僕が製造業にいたときに教えられたのは特許の適用範囲で、範囲の基本として「製品の特許」と「方法の特許」の2種類があるということでした。

「製品の特許」とは、例えば「自動車にフロッピーディスクドライブを搭載する」と言った物です。

「自動車」に新規性を加えたものが特許になる。つまり、「自動車」以外には無関係である特許です。自動車会社間でお互い意味のある特許と言えます。なお、フロッピーディスクの例は自動車ではないものの、僕が以前開発していた装置には、他社に、こういう後から考えるとバカみたいな特許が成立していましたのである意味事実です。

装置に搭載する操作端末にはフロッピーディスクドライブが搭載されていたので、普通にスルーしてましたが、そんな特許に特許料を支払い続けていたわけです。(ちなみに他社とはM→Pに変わった某社の系列)

でも、それを出願した時には意味があったのかもしれません。

自動車にフロッピーディスクを搭載することが、自動車を売ることに不可欠であれば、他社はライセンス料を払って利用させてもらって販売台数を伸ばすだろうし、販売に役に立たなければスルーされます。もしくは、フロッピーディスクの代わりにフラッシュメモリを使ってみるなどで、特許のコア要素を一つでも外して特許侵害にならない工夫をして、かつユーザーに満足いただけるようにするのもエンジニアの仕事です。


そうでなく「方法の特許」は、「それを実現するための方法」そのものに新規性が認められたものです。

「方法の特許」の方が圧倒的に力を持って、影響力が大きくなる可能性があります。

その方法が、「代替手段がなく、絶対に欠かせないほど基礎的」であればあるほど、影響範囲が大きくなるので、画期的な特許と言われます。その部分をライセンスすることで莫大な利益を上げられる。暗号化方式や、ちょっと前にあったgifに使われる圧縮技術などが有名でしょうか。

「なんとかの作り方」というのがあって、その「なんとか」が、その方法でしか作ることができず、かつ世界レベルのベストセラーになれば、他社の参入ができない状況を作ることができます。

とりわけ影響力のある「方法の特許」は、高度で複雑なものというより、シンプルで、ものすごくエレガントなものであることが多いので、真似はしやすいと思います。圧縮アルゴリズムなども、考えるときには膨大な努力をするでしょうが、結果が数式に落ちてしまえば真似するのは簡単ですよね。きっと。

そうすると大企業の資本の方が有利になってしまうので、せっかく考えを出した個人や中小企業は太刀打ちすることができません。そういう時に特許で自分のアイディアを守ることができます。


で、「ビジネスモデル特許」が勘違いされているのは、これが「方法の特許」だと思われていることでしょう。

例えば、ビジネスモデル特許で一番有名なのは、最近、過去の特許成立を取り消し、差し戻しになったアマゾンの1クリック特許があります。

(差し戻しに関しては、過去に類似の別の特許があったからという理由なので、多分、矢面に立っている俳優ではない誰かが一生懸命、この特許を潰そうとして頑張ったんじゃないかな。実際、ベンチャーが出した特許を本気で潰そうと思ったら、過去のあらゆる特許を調べて、潰すことは可能だと主張する人もいる。なので、別に1クリック特許そのものが否定されたのではなく、新規性がないとされただけなので、話を進めます。)

これは「1クリックで買えることがスゴイよね」と思った人もいるでしょうが、同時に、「そんなことが特許になるのか!」と、特許に疑問を持った人は少なくないと思います。

それはそれが「方法の特許」だと考えてるからだと思いますが、ビジネスモデル特許は、

ビジネスの方法をITを利用して実現する装置・方法の発明に対して与えられる特許

です。つまり、「製品の特許」なのです。

アマゾンの出願内容を読んだことはないので、本気で把握したい人は読んでください。日本でも出願されてるなら、特許図書館で調べられます。

ざっとコアの要件を予想すると、

「ECサイトで、予めユーザーが入力したクレジットカード情報を保持するデータベースと、商品の在庫をリアルタイムに把握したデータベースがあって、この人がログインしてる状態で、1クリックで、ユーザーが購入したいと思った商品の価格で、予めユーザーが保存したクレジットカード情報と在庫情報を元に与信をかけてOKだったら、商品を注文できるシステム」

ということになるでしょうか。

つまり、「そういう構成とデータの流れを持つシステム」に与えられた特許であって、「1クリックで買えて便利なこと」が特許なのではない。ただし、特許の内容に上げられた内容が、1クリック購入の最小要素として不可欠だからこそ、真似することができない。もし出願内容とは構成を変えて同じ事を実現できるなら1クリックを実現することもできます。

ということになります。


大事なのは製品の特許は、製品として評価されていればこそ存在意義のある特許と言えます。そのビジネスモデル特許で、誰かを幸せにしていればこそ、その特許には意味があって、誰も使ってないようなビジネスモデル特許は、それがシステム(製品)の特許であるが故に、その段階では意味がないという結論になると思います。

むしろ、その特許が成立し、実際に取得していたとしたなら(往々にして「出願」なだけのことが多い)、決して安くない特許料を払い続けているわけでしょうから、儲けているか、特許費用で赤字がふくらんでいるかのどちらかでしょう。

もちろん、頑張ってビジネスを大きくしてください、ということにつきると思うので、ビジネスモデル特許を取るぐらいアイディアがあって、かつ、そんなことは無関係に自分のビジネスを大きくするように頑張ってる人は素晴らしいと思います。

ちなみに1クリックの実現で一番難しいのは、「クレジットカード情報をまるまるDBに保持しておくリスク」と、「ユーザーに1クリックで買わせてしまうこと」じゃないですかね?!楽天も2クリック(アマゾンと同じステップで比較すると3クリックになるようだ)で購入できるようにしましたが、内部でいろんな議論の上で、ギリギリまで簡略したのが、「最後に確認画面を置く」ということだったんじゃないかなぁ。

ECのオープンソースで1クリック購入プラグインを出したら人気出そうだし、アマゾンの1クリックの無効が決定したら、きっと誰か作るだろうけど、ショップ側が、このリスクについてあまり考えてないところが便利だからと言う、売り上げ優先のノリで使うようなことはして欲しくないなぁ。作る側はリスク持たないからすぐ作れるけど、ちゃんと運用するのは・・・ね。


〜〜このエントリ、ここで終了〜〜

----------------------------------


なお、↑で以下の部分をさらっと書いてしまいました。

むしろ、その特許が成立し、実際に取得していたとしたなら(往々にして「出願」なだけのことが多い)、決して安くない特許料を払い続けているわけでしょうから、儲けているか、特許費用で赤字がふくらんでいるかのどちらかでしょう。


この部分、結構重要で、「特許出願」と「審査請求をして特許が成立してる」ことは全然意味が違うので要注意。出願は誰でもできます。一万円ぐらいで出せるんでしたっけ?しかも、オンラインで出願できるようになってるっぽい。ただし、素人の書く文章では、大企業の特許担当には勝てないので要注意。やっぱり本気で特許を取りたいなら、その道のプロにお願いするべきです。

審査請求は、以前より早くなったような話は小耳には挟んでいますが、成立するまでに3年ぐらいは最低でもかかるようです。

ドッグイヤー(死語)と言われる、このネット業界で3年はあまりにも長い。

ということで特許と無縁になってしまうのも仕方ありませんね。

ただ一点気をつけなくてはいけないのが、google mapsで地図が簡単に使えるようになったりと、Webの人たちができることが増えて、既存の専門の業界とバッティングすることが増えてきました。例えば、ビジネスモデル特許についての事例に載っている、

マピオン特許は、その一例です。

僕が携わっているカラメルでも地図検索という地図上にショップをマッピングする機能を提供していて、これの検討段階で、地図に参加してるショップさんの広告が、新幹線からの風景で田んぼに刺さってるような看板みたいに出せたらいいよね、ということを考えていたのですが、このマピオン特許を見て、うーん既に専業の人から出願されてるなーということで、ちょい無理かも、と思った物です。

google mapsの地図上にadsenseが載るだの載らないだのって話を見かけましたが、今まで実現していなかったのは、そういうのもあるのかなーなんて邪推してます。(わかんないですよ。)

Webって、一見、いろんな新しいことができるようになってる感があるけど、実は既に産業界では存在していたもののコストが安くなって、手がつけられるようになっただけで、基本的には後発技術であることの方が多いです。

QRコードみたいなものも、もともとはトヨタの製品管理の仕組みだと思います。車の部品に一枚一枚に印刷したQRコードを貼り付けていけば、今、どのラインを流れているか?を計測できるし、不良があった場合にも過去のログと照らし合わせて、何が問題だったか?を分析することができます。

だから、割と思いつく利用法は、既にその道のプロに出願されていることが多い。

ということで、エンジニアたるものただプログラムを作るとか、だけではなく、新しく実現しようとしているアイディアが特許侵害しないように調べることも仕事のうちだと思うところですが、最近、そんなところまで足を突っ込むことがないなーとエンジニアとしては寂しくも思うところであります。

特許は、特許電子図書館から無料で検索できます。

特許電子図書館 - トップページ

→特許・実用新案検索
→公開特許公報フロントページ検索
→テキスト検索

自分が出願した特許を探すのも結構大変だったのでコツがいるみたいなんですが、調べる癖を持ってるに越したことはないです。

と、自分が出願した特許を探していて、生産設備にWebサーバを載せてWebブラウザでモニタリングできる装置なんてを出していたりもします。1999年に出願したものなんですが、2006年に審査請求が出てた。

当時の直属の上司が偉くなったのもあるけど、何かが認められたということかな。ちょっとうれしい。審査請求は金かかるからね。ただ、あらゆる端末がIP化するなんてことを考えると、上に書いたフロッピーディスクドライブと同じで、こういうのが特許になるのはやっぱり違うわけで、むしろ全ての装置メーカーの装置が同じプロトコルを話して簡単に生産ラインの稼働状況をモニタリングできたりすることの方が大事。超簡単にexcelに取り込めるとか、プロファイル管理できるとか。

そういえば当時、技術発表会という関連会社集めてのプレゼンの場で発表してぽかーんとされたのも会社を辞めたちょっとした一つの理由にもなってたと思う。とはいえ、まぁ僕もその有効性は見えてなかったけどね。当時のWebというなんだかよくわからない波に魅せられていた。そういう意味では僕もかなり考え方が甘い。

そか7年か。。。だから特許をエンジニアに出させることは重要なんですよね、とも言う(w

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