March 30, 2008
「私たちが作っているのは絵の具のようなものです。常に最高の原酒を造ることしか考えていない。ブレンダーさんはその絵の具を使って表現豊かな絵を描いて、さまざまなウイスキーに仕上げているのです。」
そのように仰るのは、サントリーの白州蒸溜所という現場での品質保証マネージャである一ノ瀬さん。
僕は知らなかったのですが、白州蒸溜所で出荷しているウイスキー製品は、樽一つ一つに込められたウイスキー原酒の出来具合や成長度に応じて、さまざまなブランド名として調整されて出荷されているそうです。
例えばおなじみの安価なウイスキー「角瓶」のページにはこう書いてあります。
淡麗タイプのモルト原酒に熟成グレーン原酒をブレンド。キーモルトの白州ホッグスヘッド樽原酒及びライトタイプグレーン由来の、「淡麗」で「辛口」な味わい。すっきりとキレの良い後味が特徴。
そう白州蒸溜所で作るモルト原酒はたった一つ。そこにグレーン原酒をブレンドしたものが角瓶。モルト原酒とは、麦芽(イギリス語で、malt)から作られた原酒のことです。
なお、サントリーが販売する安価なウイスキーである「角瓶」と「白角」の違いは、「サントリー山崎」のブランドで有名な山崎蒸溜所で作られたか、白州蒸溜所で作られたかの違い。
そこにあるこだわりは、
「全てのウィスキー原酒を、その原酒の個性にあわせた一番最高の形で出荷すること」
だそうです。そこはブレンダーと呼ばれる職人の手作業。
時間をかけてもこれ以上あまり伸びないと判断された原酒は角瓶やその他の製品の形で出荷し、のびしろのある優秀な原酒は人件費をかけてシングルモルトウイスキーとして育てていく。だから値段の差が生まれる。
お酒の値段の差違は、ほとんどが人件費という単純な理屈なのです。(年数が経つにつれて蒸発していき絶対量が減っていくというのもポイント)
サントリーという誰もが知っている巨大企業のブランドを支えているのは、属人的な職人の技なのです。
属人的と聞くと、どことなくネガティブな印象を持ってしまう人もいるかもしれません、それはきっとサラリーマン感覚が身に染みついているからかもしれません。
もちろん全てのビジネス工程がそうでなくて良いのは当たり前ですが、「優れた人の感覚、センスは、どんな測定機器よりも精密である」ことがありうるということもまた知っておくべきでしょうね。
そういう優れた人材を育てるプロセスも企業としての重要な能力だと思います。そもそも企業に魅力がなければ人が定着しないのですから、属人的な仕事を企業の重要なプロセスに据えることなんてできません。
代替不可能な人材が行う仕事はコモディティ化しないのですから、それを避けるべきリスクとして捕らえるのではなく、うまくマネジメントしていきコアコンピタンスとして捕らえられる企業力こそが、こういう製品を生み出しているんですね。
今回、一ノ瀬さんのお話をお伺いしていて、以前ある焼酎メーカーさんの工場見学にも行ったことを思い出しました。そこでお伺いした担当者の人も今回の一ノ瀬さんもそうでしたが、お酒を作っている人は共通して「自分たちは良い物を作っている感」という空気を醸し出しています。
両社の人達、共に物作りに対する絶対なる自信とプライドを感じるんですね。
なんでなのかなぁって考えてみました。
それはお酒はお酒自身が生き物で、作り手たちはそれを最高の形に育てるお手伝いをしているからかなって。お酒は微生物の力で熟成されるものですから、それの力を引き出すのが彼らの役割で、何よりがんばってるのはお酒が持つ自然の力そのものです。
優秀な子供を持った親のような感じだからこそ、はっきりした自信を伝えられる。そんな感じなのかなって。
と、前置きが非常に長くなってしまいましたが、AMNのイベントで、山梨にあるサントリーの白州蒸溜所で実施されている「時が育むシングルモルトの魅力講座」の体験イベントに参加しました。通常は1,000円で参加可能な見学コースとなります。
週末に流れてくる東京FMのAVANTI(このリンクからpodcastで聞けます!)で流れる、「何も足さない、何も引かない」というCMのキャッチからサントリー山崎にハマり、会社ではサントリーのウーロン茶と黒ウーロンを飲み、結婚記念日には新宿野村ビルにある「響」にご飯を食べに行く…思い起こすとサントリーさんにお世話になりっぱなしなので、願ったりかなったりというイベントでした。
白州蒸溜所のフラッグシップとなる製品は、その名の通り「白州」
いつも飲んでいる山崎との飲み比べをしました。白州を飲むのは今回が初めてでしたが、白州のさわやかな味わいにハマってしまいました。
「こっちの方が好きかも」
白州のポイントは、森の中の蒸溜所らしいさわやかな味わい。
夜9時以降にまったり行きたい山崎も良いですが、さわやかに行きたい時には白州ですね。
そんな白州で作って参加者みんなで大盛況だったのが「すごいハイボール」
僕は今までハイボールという名前の飲み物を飲んだことがありませんでした。
そもそもウイスキーをおいしく飲ませてくれるお店というのは少なくて(ビールもカクテルのおいしいお店も少ないですけどね)、居酒屋系の安いお店で飲むウイスキーの炭酸割りというのは、炭酸の苦さの方が勝ってしまったりと、おいしくないお店の方が多いです。
ここで飲んだ「すごいハイボール」はそのイメージを一変するものでした。
清涼飲料水のように飲まれるお酒と言えば、ジントニックが有名ですが、ちょっと甘いジントニックよりも、遙かにさわやかな飲み物でした。
良いウイスキーで作ったハイボールは、ウイスキーの香りで飲む飲み物です。
森の中のウイスキーとして作られた白州で作られた「すごいハイボール」は、白州の特徴であるスモーキーな新緑の香りが全面に出てくる一品です。
作り方は以下のスライドが参考になります。
若くて元気のある味わいの白州10年や12年で作ると良いと思いますよ!
もう既にYoutubeで、「すごいウイスキー」の作り方をアップされている方がいらっしゃいました。参加者の坂田さんのblogが記事より先に動画をアップされているようなので、とりあえず動画の方を先に貼り付けさせてもらいます。(後でリンク貼ります!)
おいしくウイスキーが飲めるお店って、なかなかないんですよね。
帰りのバスの中では、ウイスキーがとても大好きなブロガー参加者、たつをさんや平田さん、コグレさんなどのアルファブロガー、サントリーの担当の方を交えての宴会状態になっていたので、そこでおいしいお店を聞いてきましたので、ご紹介いたします。
こちら、おいしいハイボールが絶品だそうです。
ロックフィッシュ 銀座、[オーセンティックバー]、東京都、東京駅/有楽町/日比谷|BAR-NAVI(バーナビ)
沢山のシングルモルトが飲めるお店
日比谷Bar WHISKY-S、[ウイスキーバー]、東京都、銀座|BAR-NAVI(バーナビ)
そして最後に職人の仕事っぷりをご紹介したいと思います。
ウイスキーを熟成する際にお酒を入れる樽そのものが、お酒の味に大きな影響を与えるのだそうです。そんな樽も長く使っていると、お酒に与えるパワーが徐々に失われてくるのだそうで、その樽を復活させるために、樽の中を燃やすリチャーという作業工程のデモです。
解説の方も聞こえるので是非、スピーカーの音を聞きながらどうぞ!
参考リンク:
今回のイベントは、ululunさんの報告がとても詳しかったです。
サントリー「時が育むシングルモルトの魅力講座」体験イベントレポート 「すごいハイボールの作り方」付き - 煩悩是道場
一緒に行ったうちの奥さん(ふうり)によるレポート
サントリー「白州蒸溜所」に行ってきた1:プロローグ|fuuri.net
「プロフェッショナル仕事の流儀」に白州蒸溜所のブレンダーさんが出ていたようです。
2005年からずっとこの番組は録画していたつもりなのですが、この頃、録画が止まっててハードディスクにデータが残ってなかった。残念!でも、以下のリンクのあらすじだけでも、感動できますね。「優等生では面白くない」・・・僕がいつも仕事で考えていることと同じでうれしいです。
ウイスキーブレンダー・輿水精一(2006年11月9日放送) | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀
サントリー広報による公式ブログ
シングルモルトウイスキーセミナー(白州蒸溜所)のブロガーイベントレポート(3-1) - サントリートピックス
■「すごいハイボール」セットのご紹介。
銀座のおいしいお店に行けない方は、是非家でどうぞ!
ソーダもサントリー純正のザ・プレミアムソーダで作りたいものです!