March 04, 2008
先日書いた「ケータイ小説ってのは、小説のイノベーションのジレンマなのでは?」をきっかけに献本していただた。
毎日コミュニケーションズ (2008/02/20)
売り上げランキング: 3248
ビジネスの観点からケータイ小説現象を読み解く
ケータイ小説をビジネス視点で
とりあえず本書を読んだ後、恋空の前編を全部ケータイで読んでみた。その後で、wikipediaと、Amazonの炎上レビューをさらっと見てみました。
後半読んでないけど、なるほど後半ではそんな感じになるのか。どんよりですね。
■レイプなどが安易に用いられる件
確かに恋空のコアの魅力にとってレイプが必要なのか?っていうと必要ないですね。後半の話で言えば、僕自身は人が死ぬことをゴールにしたストーリーは嫌いです。何故かというと、人が死ぬのは悲しいに決まってるから。そこが決まっていることを利用するのは文章としては安直だと思います。
でも面白かったですよ。でも、エヴァンゲリオンを見た後みたいに、どことなく重い感覚です。
学生の頃って世界が狭いんですよね。車もないしお金も知識もないので、移動距離もたかがしれてるわけです。そんな狭い中での関心事や恐怖、現実に起こりうる問題、そんなところが拉致、レイプだったり、援助交際、両親の離婚、妊娠、イジメ、シカト・・・などに直結するんだろうなぁと。いきなり自殺するとか、話の展開が安易だったり、いろいろ安っぽいなぁと思えるのは、きっとあなたがオトナだからじゃないでしょうかね?!
自分が高校時代を振り返ってみると、友達とうまくいかなかっただけで、逃げ場のないどんよりした一日を過ごしたりしませんでしたか?
■行間の共感
「等身大の投影」の表現として共感を得る文章は、複数改行の行間にある、リアルな想像力によって支えられている。
思い出してみると元祖のウィザードリーがワイヤフレームの黒い画面のRPGとして想像力や恐怖感が醸し出されるのが魅力だ、なんて言われてたんですよ。
ウィザードリーの黒い画面には恐怖感が描かれ、ケータイ小説の行間には、自分だったらどう思うだろう、という共感が描かれている。場合によっては、経験のフラッシュバックが描かれるかもしれませんね。
僕も恋空を読んでいて、僕もいろいろ共感し思うところがありました。まぁ30年以上生きてればそれなりにいろいろあって、結構、えぐいところをついてくる。
完成度が高い小説というよりは「電車男」に近い。あれも共感と妄想なわけじゃないですか。エルメスと知り合えたらいいなーみたいなところが、主人公や周りの支持者がオタクであるという浸透液を通じて共感するわけです。
そりゃね。ネットのコンテンツだから、そんなに変わらないんでしょうね。
そもそもネット上では小説と詩ってのは昔から定番コンテンツです。
アニメのタイトルで検索すればオリジナルの小説はわんさか見つかるし、パソコン通信世代で、ボードゲームが好きな人はリレー小説なんてのもありましたね。
それが女子高生向けに実装を変えただけと考えたら、何も特別なことはありません。
昔からネットに親和性が高かったコンテンツ形態が、単純に今も生きているということに過ぎません。
もちろん、それを携帯サイトに持ち込んだ人たちは凄いです。
■ケータイ小説のビジネス展開
「ケータイ小説がウケる理由」を読んでいて、ケータイ小説が終わるパターンを二つ考えてみました。
1.この刺激の強さに飽きた後のニーズの変化に作り手の能力が対応できない。
2.ビジネス目的のオトナが入ってきて、利用し始める。
この二つかなぁと。
基本的にビジネスには利用して欲しくないですね。
本書の著者はマーケティングが専門の方なので、最後の方にケータイ小説は次世代マーケティングだ、なんて書かれてるんですが、そういうキーワードにしか反応できない人には近寄って欲しくないです。
それこそ、バズマーケティングの悪い例と同じような話になっていまいます。
ケータイ小説が流行ってるからって、企業が思いつきで利用するようなものじゃありません。
コンテンツの内容はコントロールできると思いますが、ユーザーの反応はコントロールできません。出版化を最初にお願いしたのは、ケータイ小説の読者だそうですが、最初は売れるかわからなかったけど、想像よりも遙かに売れてしまった、そんな程度じゃないんでしょうか?
しいて言えば、顧客との良好な関係を作ったらビジネスが大きくなった、ただそれだけのように思えます。
■携帯電話の特性
・クチコミとしての広まりやすさを助長した。
・ダイレクトな反応が得られることを生かした。
・作り手も毎日更新を頑張った。
・書籍化することが低コストに伝達する手段である。
というあたりでしょう。携帯としての特性を生かすために頑張ってることが何よりも大事ってことでしょうね。
■とりあえずケータイ小説でわかったこと
1.文字の文章コンテンツはその気になれば読まれる。
2.メールを使うようになった僕たちは、一昔前のTV中心に育った世代よりも、間違いなく文字に関わり合う時間は増えている。
3.感情表現を文字で行うためなどの理由で、常に若い世代は新しい言語やフレームワークを勝手に開発し活用し始める。
4.オンラインで完結するよりも、本として所有することには意味を感じられる。
恋空というコアのラブストーリーを考えたときに、コンテンツが関心を得るためには、ここまでに暗く余計な肉付けを書かないといけないのか?というのが正直な感想である。今のケータイ小説に対する批判のポイントにもその部分は無視できない。
冒頭に、恋空のストーリーのコアにレイプは必要ないと書いた。しかし、子供にとってはドラえもんなどのキャラクター、マンガを読む層にとって萌えな可愛い女性、映画を見る人には二枚目俳優と、コアとなるストーリーがアテンションを得るために必要な「浸透液」がある。
ケータイ小説という個人のメディアには、心の闇や不安に直結する、さまざまな要素が浸透液として必要だった、と考えられる。
それに対する非難は、まさに広まってしまったから、ただそれだけに尽きる。
自傷行為や鬱病も対象者が10人ぐらいしかいなければ、レアケースと軽くスルーされるのが100000人ぐらいになればスルーされなくなって社会現象として取り扱われるのと同じだと思います。
■最後に
僕が大好きな「ツルモク独身寮」というマンガにこんなフレーズがある。
五巻165ページ
「先が見えてしまってる」と自暴自棄になってる新入社員の仕事の失敗に腹を立てた主人公が喧嘩の後に、
新入社員:「たいていオレみてぇな奴は「新人類」の一言でかたづけられちまうんだけどな・・・・」
主人公:「年寄りどもが自分を正当化する為につくったくだらねぇ言葉さ」
Amazonの恋空レビューに書かれていた、スイーツ(笑)という揶揄も含めて、何故かこの部分を思い出していた。
「ツルモク独身寮」というマンガは、僕が高校時代の時に読んでいたマンガ。全体の流れを含めて、いつの時代も同じ事を繰り返すのかと、半分がっかり、半分安心。
毎日コミュニケーションズ (2008/02/20)
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