February 08, 2008
LUNARR(ルナー)というサイボウズ元社長の高須賀社長が作られた新しいWebサービスの発表会に招待していただき行ってきた。
LUNARRは、ドキュメントとコミュニケーションを結びつけるツール。いわゆるSaaSとして提供されるWebアプリ。
メタファとしては「表と裏」という考え方だ。例えば名刺に表面と裏面があるように、表面をドキュメント、裏面をドキュメントをキーにしたコミュニケーションが存在する。
具体的な実装として表面は、Webページであったり、Google Docなどをオーバーラップするような形になっている。イメージとしては、tumblrのリブログしたものを、クローズドで共有するイメージか。
また表面のドキュメント生成機能としては、WordやExcelを取り込んだり、WordはWeb上で編集できてしまったりもする。また、気になるWebページを取り込んで文字を書いたり編集することも。
そして裏面のコミュニケーションは、情報共有したい人にメールを送る画面がついているというもの。以降、そのメールのレスポンスは、このドキュメントの裏面に紐付けられて確認ができる。関連ドキュメントを登録しておくことで、ドキュメント間の関係も記載しておくことが可能らしい。
コミュニケーションのスタイルとしては、今まで僕らがぱっと思いつくwiki、SNS、掲示板やサイボウズのファイル管理機能などとは違い、ドキュメントにコミュニケーションがくっついてくるというものである。
そこがtumblrに近いと思ったところ。もっと乱暴に言うと、2ちゃんねるスレの「1」がドキュメントで、2以降がコミュニケーション。スレを見ればなにが起きているかが一目でわかるが、そういうメリットを、WORDやExcelなどにラップしたものと言えるのではないか。
tumblrの場合は、ドキュメントの断片がリブログなどでコピーされて情報が拡散していくので、そのまま同じではないが、場所に対するコミットというよりは、純粋な情報への興味、関心がユーザーコミュニケーションの主体になるというあたりに共通性を感じている。
で、だ。
tumblrが使った人しか魅力がわからないと言われるのと同じく、LUNARRも若干、似たようなわかりにくさがある。
僕は以前、社内、顧客、協力会社にまたがるプロジェクト管理システムを作っていて、プロジェクト情報をメールにぶら下げるあたりは僕も考えていたので、実感に基づいて思うところがある。このサービスの説明を聞いたときに、あぁこのぐらいシンプルにすべきだった!と思った。
特に前の会社でビジネスとしていた翻訳業務は、原稿ファイルと、それを翻訳するのに必要な関連する翻訳辞書データなどとの組み合わせで仕事が進むので、原稿に関連情報をぶら下げられること、やりとりの履歴が残ること、ファイルのバージョン管理ができるこのサービスは最適だと思う。
それでも今までの経験論に照らし合わせて、ものすごい使いやすいね、とは手放しで言えない部分は正直ある。
多分、それは情報流通のきっかけとなるものがメールという不安定な状態を介すると思うからだ。人はポータルのように安定した場所に情報が置いてあると安心する。
会社でも、ファイルのやりとりフォルダを決めておいて、そこにファイルを置いて、口頭だったりメッセやメールでコミュニケーションを行う。
で、ソーシャルブックマークのように情報が埋もれてしまうし、アカウント作ってもログインしてくれるかわからない、という状態をまた作り出すわけだが、まぁそれはそれとして一番わかりやすいことは間違いない。
一般社員にとってのサイボウズが、会議室と上司のスケジュール予約システムにしか使われないということはままある話だが、同時にサイボウズの最大のビジネス上のイノベーションは、「とりあえずサイボウズ入れておいて!」という言葉で上司の手間を減らしたこと。
それに対してLUNARRは真っ向から勝負を挑んでいる。
既存のやり方だと、ドキュメントとコミュニケーションが分断される形になるのに対して、LUNARRは、完全にドキュメントにコミュニケーションが連動しているので、分断することはない。
何故、そこにこの情報があるのか?というのを、相手に告知する行為を通じて記録されることに、きっとLUNARRのポイントがあるんではないかと思った。
今ふと思ったのだが、LUNARRのデモにおいても、メールで相手に情報を伝えるという部分のコンテキストをもっと重要視してみてはいかがでしょうか?
人が人にモノを伝えようとするタイミングこそが、人間にとっては一番情報が整理できるのではないだろうか。相手の顔を見ながら、自分の考えを伝えようとするモチベーションは、ものすごく有意義なことであり、その部分をあまさずメタデータとして記録できるLUNARRはスゴイんだよ!という考え方はアリだと思う。
社内SNSは、コラボレーションをQ&Aというpull型のアプローチで解決しようとしてるし、SVNやCVSのコミット時のコメントも善意で入力してくれるであろうというpull型の情報共有だ。それに対してLUNARRは、コミュニケーションとセットなのでpush型と言える。
インターフェースにメールを使っているのは、とても良いと思うので、あとはどのぐらい気持ちよいか?というのは重要だと思う。メール主体で土台がない不安定なイメージと言うのも、ドキュメント自体はLUNARRにあるわけだし、そもそも人を伝って送られてきたものだから、なんとも思わないだろうし、このシステムが当たり前のものとして受け入れられれば手放せないツールになるハズだ。
と、ここまで書いてきてなんだが、実はまだ一度も使ったことがないので、ベータ版に参加させてもらうように連絡を取るつもりだ。高須賀社長の熱いプレゼンとデモを見ているので、もっと奥深かったということ以外に、そんなにハズれたことは言ってないと思う。
##プレゼントコーナーでなんと参加者全員にiPod nano 8GBがプレゼントされました。会場もリッツカールトンだしリッチですねぇ。しかも、プラスαのプレゼントでMacBook Airがプレゼントされ、僕の斜め前の人が当たってました、なんか悔しい羨ましい。さらに、カタログの袋の底に、iTunesのギフトカードが貼られており、カタログを途中で捨てさせない施策もしっかり行われていました
追記:こっちも書いた。
「元サイボウズ高須賀社長に見る広告宣伝の重要性」