August 27, 2007
昨日は、WebSig24/7のIA分科会の第二回目でした。前回に引き続きネットイヤーの坂本さんに講師になっていただき、今回はワークショップを行いました。
Web標準の日々で、ネタとして使われていた水産庁のWebサイトを再整理し、「サイトマップを作る」という課題でワークショップを行いました。
僕は運営側でしたが、遅れてきた人&モデレータチームとして参加して、以下のような内容を作りました。
サイトマップと一緒に作ったトップページのラフだけ写真に撮ってありました。
この企画、事前の宿題として、このサイトにアクセスするペルソナ(ターゲットとすべきユーザー属性)を考えてきなさい、という課題があったのですが、そこでここにアクセスする人は、一般ユーザー(漁師や漁師希望者)はアクセスしないであろうという仮説を立てました。
水産庁のページにも「漁師になろう」というコンテンツがあるのですが、ちょっとお堅い視点からのコンテンツのように見えました。
そもそも漁師になる人がいきなり国のサイトにアクセスするとは思えなく、通常は漁業組合や県などの地方自治体の方が親和性が高いハズです。それら組織の上にいるのが水産庁であるならば、主に組織対組織のニーズが水産庁のWebサイトにはあるだろうと思ったからです。(もちろんノーヒアリングだし、めちゃ調べたワケじゃないので、あくまでサイトマップを作るためのワークショップとして解釈してください。)
「漁師募集」のキーワードで検索していくと、二つの面白いサイトが見つかります。
と
です。
とにかく漁師を必要としているというのが伝わってくるコンテンツです。
見ていくと、脱サラして漁師になりたい人に対する独自の支援制度(研修制度など)や、それを受け入れる側の漁師さんへの心構え(素人が入ってくることに慣れてない職人さんへの教育)など、非常に充実した情報が見られます。何より、良く見せようとか、そういうのは感じられないです。都合の良い言葉を並べても、現実の方が甘くないわけですから、そこはちゃんと理解して来てねという等身大の彼らの生活が見えてきます。
サラリーマンを辞めて漁師になった人、とか現役漁師になっている人の話が見られるのが良かったですね。年収とか生活とか見えてきて。やはり一番楽しいコンテンツは人のプロフィール(生き様)ですね。
だから、水産庁としては、こういう組合が作っている本気のコンテンツをとりまとめるリンクを貼ったりポータルサイトを作るのが良いんじゃないかと思って発表では提案しています。全ての漁協がやってるとは思えませんから、Webサイト作成の支援金を出したり、横のつながりを作ってあげるのが良いんじゃないでしょうか。
例えば、運輸省が車を宣伝するより、自動車メーカーやマスコミが営業した方が確実に魅力を伝えられるし、僕ら、車に乗ってても運輸省や警察庁の意識はありません。せいぜいアクセスしうるのは運転免許センターか陸運局、地元警察まで。現場を支援(コントロール)するのが省庁の役割ですから。
最近、はてなブックマークやRSSリーダーを主体に、インターネット関係の話題に絞ってしかインターネットを見ていなかったので、とても新鮮だったし、何より、Webって面白いし、可能性あるよなぁって再認識できました。
受託でお客様の個別案件をこなしてる人には、何をいわんや、という話だし、そもそも僕のお客様には、いろんなお客様が沢山いらっしゃるし、今いる会社自体が、「誰にでも情報発信の楽しさを知ってもらう」ためのサービスを提供しているわけですが、どうしても日常の仕事の中では環境提供側としてマス的に見ている側面は否定できなかったように思えます。
今回、水産庁サイトのあり方みたいなのを考えながら、その前後に存在する人たちのサイトにまで幅を広げてみたら、今、漁業が抱えている問題点が見えてきて興味深かったです。
多分、受託でもヒアリングありきで、目の前の顧客ニーズを満たす視点から入ってしまうと、こなすことが精一杯で、そこまで幅広く物を見なかったりしますよね。そういえば僕は前の会社ではエンジニアという立場だったから、サイト提案などはやってなくて、どちらかと言えば与えられた役割をいかにこなすか、という立場だったんだなぁと。
前職でIAの部隊を作ったときも、開発と兼業だったから、僕自身にはそこを掘り下げる余裕はとてもなかったし。その昔、情報設計オフで坂本さん達にいろんなことを教えてもらった先に、今の自分があると言っても過言ではないので、今回、その延長線としてIA分科会に参加して良かったです。
ところで、この話をこのタイトルで書くに当たって後押ししてくれたサイトがもう一つあって、マネーの虎でも有名な、高橋がなり氏が、ソフトオンデマンド社を手放され、今は社会起業家として農業ビジネスを始めているそうです。
トップページに資本金の残りが表示されているというユニークさもさることながら、社員一人一人のバックグラウンドが掲載されていること。そして、生き残った社員の人数が出ていること。
初期メンバーで生き残っている社員は、超高学歴な人たちの挑戦。それ以外にも人生を一度失敗してしまったような人たちが負け犬からの脱却としてチャレンジしている人たちもいる。
このWeb自体が、この会社が今進行しているストーリーを描いている。会社運営の可視化と言ったら大げさかも知れませんが、ヒト、モノ、カネが見えてるんじゃ、まさに丸裸ですよね。
ちょうど、「未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家」という本を読んでいたのですが、それよりもこのサイトを見続ける方が、ライブストーリーが伝わってきて良いですね。見逃せないサイトだと思います。
やっぱり素敵なWebは、単純なカタログではなくて、ストーリーを伝えるべき存在なんだなぁって思います。まさにWebの作り手に求められる役割とは、コミュニケーションデザインであるという、Web屋であれば至極当たり前の話に帰結します。
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