July 21, 2007
何故、CSSが使われるようになったか?それは、CSSが良かっただけじゃなくて、SEOのためにCSS + XHTMLが必要になって、その代わりにネスケ4を忘れて良いことになったから。
hidetox blogさんの
Webの「標準」って?
>でも、しかし、そもそも「Web標準」って意味あるの?
>そういう問いを突き付けてますよ。
>このランキング結果は。
の指摘は納得です。
サービスに目を向けたところがポイント。
今回、多少なりとも「Web標準の日々」のスポンサーについて考えたことはある。
でも、僕のところで話を止めてしまった。今回、スピーカーで参加した流れで、僕が出して欲しいって言えば、実際にお金を出す責任者に話を持って行って、その有効性に対して議論してもらうことは可能だったが、一番最初のきっかけになった僕が自己判断で進めなかった。
それは、サービス会社が費用対効果を目指して、「Web標準の日々」にスポンサーになったとして、そこに費用対効果としてのメリットが見られない、と僕は思ったから。
Web制作を受託で行う会社や人であれば、生産技術やコードが納品物そのものであり、そこに直接的な報酬が発生するわけだから、そのクオリティのためにWeb標準に見合ったコードを書くのは、製品品質の向上として重要だと思う。
(ただ、精神論じゃなくて、そこにかかる実コストと、顧客ニーズに見合えばの話。)
サービス運営会社にとっての品質は、サービスそのものの価値になるわけだが、顧客も含めてのサービスの価値に、HTMLのコードがWeb標準であることが、どう結びついてくるのかは現状、見えていない。
カラメルでも、もちろんXHTML + CSSは使えているが、lintで調べて、ちゃんと高得点になるかというとそうでもない(lintはlintなので、別にこれで満点を取るつもりは更々なくて参考でね)。開発時の制作要件にも、CSSとテーブルレイアウトですらハイブリッドで良いよとか言ってたし、Web標準の対応をまったく上げなかった割には、品質は高いと僕は思ってるけど、Web標準を、そもそも体系的に意識しているかっていうとそうでもなくて、コーディングした人たちのスキルと思いでカバーされている感じ。
(ていうかプログラマーが書いたコードに、lint的にマイナス評価が集中してたりする。リスク低く直せる範囲では直したけど。)
サイトとしてSEOに問題があるわけではなく、現状の対検索エンジンに対してビジネス目的は十分達成する品質にはあるし、毎日調べていて数字も出せている。それよりも今のビジネスフェーズにおいて、サイトブランディングであったりコンテンツであったり、機能であったり、もっともっと努力しなくてはいけなくて、プライオリティを上げなくてはいけないことが沢山ある。(ここ重要)
私見であるし、別に今後もそれで良いと思っているわけでも何でもないが、大小いろんなライバル会社の動向をみながら、毎日、いろんなことを考え、日々、HTMLやシステムの変更をしているサービス運営企業のビジネスとしての努力目標に、現状のWeb標準は残念ながら入っていないんじゃないと思う。少なくとも僕はそうだ。申し訳ないけど。
昔いた会社で、生産装置を作っていたので、一時期、現場で「制御板」を作る仕事をしていた。
板の上に、電源とかスイッチとかリレーとか、その他コントローラーを配置して、線を繋いで装置としての機能を作り込んでいく仕事。
いわばHTMLのマークアップに近い。(というか僕はこの業界に来て、機械とソースコードが全部ソースコードになって、アウトプットが「画面」になっただけで、僕自身は同じ仕事をやっていることに気がついた。)
この仕事を専門に行うパートナーの「盤屋」さんがいるんですが、彼らにとって、配線をキレイにならべたり、できるだけ短くすることは、製品の見栄えも、メンテナンス性も向上します。つきつめれば、無駄な電線も削減できるし、ぐるぐる線を回ってしまうことで発生する、無駄な磁界の発生を抑え、配線部分での発熱を抑えることもできるので製品の寿命にも影響するそうです(と彼が言ってた)
LANの業者や電話の業者にオフィスやデータセンターの配線をお願いすると、配線がとてもキレイに配線されていると思いますが、あぁいう配線をするような仕事です。
そこは、盤屋さんにとっての品質の証なので、彼らはきれいに配線することを重視します。
ただ電線というのは、結構、繋げば動いてしまうわけです。
確かに、線がぐちゃぐちゃになることでメンテナンス性も、使う配線のかなり無駄が発生してしまうと思いますが、それはそれとしても、少々、線の取り回しが汚くても、日々の運用を維持していくために、装置としての目的は達成できたりするわけですね。
もし、ここで生産に必要な変更を現場で行ったときに、配線をきれいにしないとリリースしてはいけない?!
そんなわけないですね。肝心なのは装置を運転することであって、きれいに配線をすることではない。
実際、納品基準に板の線の取り回しなどについての基準はほとんど聞いたことはありません。それよりも大事なことが沢山あるわけです。
問題になるとすれば、その行為を守らないことが、「利益を生む」事に対してマイナスの効果が発生する場合でしょう。例えば、Web標準で、HTMLがstrictじゃなきゃで検索エンジンで一位にはならない、とかですね。現状は、コードを最高にするよりも誰かがサイトを気に入ってくれてバックリンクを一つ貼ってもらえる方が全然、重要ですよね。だから、リンクを張ってもらうための施策はするけど、コードのクオリティを維持するために、コストはかけられれないってのが今の考え方では。
今のフェーズでの、Web標準とサービス運営会社に対する意識はそんな印象です。
で、じゃぁ、Web標準っていらないのか?
そんなハズはないですね。適切なHTMLコードは、多くのソフトウエアで動くようになる。例えアクセシビリティ要件を満たさなくても相互運用性が高くなって、お互いにハッピーになれる。
標準に準拠する重要性は、高速動作、安定性重視のネットワーク機器屋さんは意識が高いんじゃないかと思いますが、そもそも標準に準拠することは「当たり前」なわけです。
ただ、ことHTMLに関しては、googleやovertureもIEも賢いので、コードの品質がめちゃめちゃ高くなくても、問題ないように彼らが彼らの目的の元で努力してくれていて、そこに支えられている(問題が埋もれている)わけです。
しかし、それは、結局彼らの利益の元でそうなってるわけであって、ある日突然、strictなHTMLを評価しますという価値観にかわったら、今、標準を意識し頑張ってる人が得をします。
コード品質を意識し、かつビジネスが回ってるなら、標準を意識したコードが書けて絶対に損はありません。
ということであれば、結局、現状のWeb標準やアクセシビリティへの対応では、「コードを書く人が意識できていれば、結構カバーされるハズ」という前提で動くのが一番良いのかなと個人的には思っています。簡単に言うと、「プロ意識」ですし、それを会社の品質目標に掲げてブランディングできるなら、そうすれば良いわけです。
>だとしたらWeb標準の教科書とかで最初の説明として「Web標準、
>というかアクセシビリティは、まったくお金にならないけど、世の中の
>ためになるボランティア活動です」ときちんと書いておいた方がいい。
なので、「Web標準対応=ボランティア」の前に訴求のためのフックを1段階置けると僕は思っていて、Web標準対応は、マークアップエンジニアや制作に関わる人が「先々クライアントの利益を損なわない」ことに対する品質問題であり、「プロ意識」の範疇にある、と考えています。
結局、css niteに制作の人が沢山参加しているのは、そこの訴求がうまくできいるってのと、制作の人も高い品質のコードを書きたいと思っているからこそ、このイベントが成り立っているのではないかと思っています。
ちなみに、「パーマリンク」という考え方が普及したのも、やはりSEOに有効だからってのがポイントでしたね。
プロなら「Web標準を実現できる人」になって欲しいというプロ制作者の考え方と、ひとつのcgiのURLで、URL引数になんでもかんでも書いて制御する設計はやめてくれってのは、似ている考え方だと僕は思います。
あと、Excelを方眼紙にするな!ってのも(w
システムに置き換えるとわかりやすいのは、元からパーマリンクを意識していた人はなんの変更もなく、時代の変化に対応でき、パーマリンクではないシステム設計をしていた人たちは、また高いコストと、エラーのリスクをかかえながら、直すハメになったわけです。ECサイトが、この辺の追従には非常にセンシティブで、王者級でないところは、気がついたらみんなURL仕様が変わってやんの。
そう考えると「会社」を動かすなら、目的がお金に落ちることって、ものすごく重要ですね。
受託の納品物であれば、請け負った側は瑕疵責任以上の責任は発生しません。
だから、「Web標準に対応しないコードを書く」、「パーマリンクに対応してない設計をする」ってのは、要求仕様書になければ瑕疵責任にはなんら問題はないけど、ゆくゆくはビジネス損失という形で問題が発生する可能性を秘めているわけです。
だからこそ、作り手は日々のトレンドを身ながら、先々も見据えた品質意識を高めて欲しい、今のWeb標準が必須事項でない以上、そこへの意識はプロとして忘れてはいけないと思いますね。
サービスの人は、プライオリティが高くなければ、標準に対応できてなくても大丈夫なんだけど、ある日、価値観が変わったときに、直せるコードになってたら幸いですね。スピーディーにビジネスを維持できます。きっとマネージャーから感謝されることでしょう。