April 20, 2007
まず、訂正から。
Google Analyticsはマジ怖い。に書いた内容で、
Google Analyticsでは、Webサイト間の詳しい個人情報を把握することはできません。
これについて間違った記事を書いたことをお詫び致します。
クッキーは、どのブラウザにおいても、一つのクッキーが共有可能な最大の範囲は、「同一のドメイン」までです。そのため、あるサイトに来たユーザーの情報を、クッキーを使って他のサイトで再現することは不可能です。(昔の特定のブラウザはバグで、全サイトの共有クッキーが作れたらしい。)
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Google Analyticsのクッキーと、urchin.jsの仕組みについては、「ひろ式めもちょう」さんが詳しく書いておられます。
ファーストパーティクッキーというのは、Google Analyticsのコードを貼り付けた「自分のサイト」によって発行されるクッキーのことだそうです。これに対するのが、サードパーティクッキーで、これは今回、Googleが買収したダブルクリック社のような広告がユーザートラッキングのために発行しているクッキーだそうです。
Google Analyticsに加入したあとで貼り付けるスクリプトによって、ファーストパーティクッキーが自動的に発行され、なおかつ、スクリプトがGoogle Analyticsにユーザーのアクセス情報を送ることでアクセス解析が行われます。
今回の話の発端になった、Googleの担当者インタビューは、このファーストパーティクッキーを発行しているGoogle Analyticsを重視して伝えた物で、それ以上のものではなかったと考えられます。
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さて、今回皆さんから学んだことをふまえ、僕がgoogleにいたら、今回のダブルクリック社買収にこう思い、こういうことをやりたいという話を書いてみます。
※注意:この話はフィクションです。必ずしも事実に基づいていません。
■Googleがやりたいこと。
Googleがやりたいことは、一人一人のネット上の行動履歴を把握することではありません。
Googleがやりたいことは、高精度のターゲティング広告を配信し、より広告クリックの精度を上げ収益を高めることです。広告の収益を上げることで世界を変えるような新しい技術の研究に集中できるのです。そのために世界を変えるような技術を導入して広告の価値を上げていく必要があります。
■Googleが恐れること。
.NET Passportを提案したときのMSのように、世界中から敵対心や恐怖心を抱かれ、余計な反対をされることなどは徹底的に避けなければならないことです。
なので、Googleは個人情報を特定するようなことはしません。Googleには必要ありません。もっと統計的推論から事実を見つけ、より高度な情報把握をします。
■ダブルクリック社の買収が何故スゴイことなのか?
今までのGoogleは、以下に示す方法で、アクセスするユーザーの行動をトラッキングすることが可能でした。(念のため、個人の特定や、適切なひも付けはできません。)
1.各種Googleサービスでの行動把握,Googleサーチ,Gmailなど
2.個人blogや、広告を収益とするWeb2.0サイト・・・Google Adsense
3.Adwordsを出広しているECサイトや販売系サイト・・・ Google Analytics
これらのサービスに送られてくるアクセス情報を集めることで、個人の特定はできなくとも、それぞれのログにある、リファラー情報とアクセス数、時間情報から、ネット上のユーザーの動線や人気の分布をある程度、知ることが可能です。このある程度ってのがポイントで、統計的計算をすることで、一人一人の情報は断片的でも、全体で見えてくるものがあるのです。
また、Google Analyticsのような高性能な無料サービスを提供することで、どんどん設置サイトを増やしていき、徐々にデータの精度が上がってきています。
しかし、今までどうにもリーチしにくい分野がありました。
それは、
「お金を持っていて、自社でアクセス解析をしている大企業のサイト」
です。
Googleに肩を並べる規模の大企業のサイトに、Google Analyticsのコードがまんべんなく貼られているということはないでしょう。
しかし、Googleが広告を販売するならば、いくらロングテールのGoogle Adsenseといえども収益の高い大企業とのリレーションシップは不可欠です。
大企業サイトを軸としたユーザー動線が把握できることで、よりユーザーニーズに即した広告の配信ができるでしょう。
例えば、ソニーのVAIOを欲しがっているユーザーの動線はどういう道をたどるのか?一人一人のトラッキングはできずとも、リファラーのツリーを多数、集めていくことで、リンク動線の流れは統計的に考えると見えてくるのではないでしょうか。
その行動パターンに一致する人は、VAIOを欲しがっているユーザーである。Sony Styleにいって、kakaku.comに行って、2ちゃんねるのソニー板に言った人は、VAIOを買う可能性が高いかもしれない。
そういう動線が、ありとあらゆる商品で見えてくると、広告主にとっては最高です。
最終的に購買を決定するところに、ポンとVAIOの広告をAdsenseで出してあげる。もしかしたら、そこでThinkpadを出してあげたら、違うメーカーを買うのかもしれない。そこでAdsenseの入札の価値やダブルクリック社の広告の価値があがるのです。
今までは検索キーワードに入札をしていましたが、ひょっとしたらサイト動線の組み合わせに対して入札をしてもらうシステムを提案できるかもしれません。
重要なのは、あらゆる商品のトラッキングのためのハブとなるのが大手サイトや新聞社のニュースサイト、メーカーサイトであること。今までこういうサイトにGoogle AnalyticsやAdsenseは入り込んでいませんでした。
しかし今回、ダブルクリック社を買収し、既存の広告配信ビジネスを利用することで、大手ニュースサイトやメーカーサイトからGoogleがユーザー行動をトラッキングする手段を得たと言えます。
これにより、世界中のあらゆるキーとなるサイトからGoogleは情報を取得する足がかりを得たと言えるでしょう。
また、私がGoogleの社員であったならば、もう一つやりたいことがあります。
ユーザー行動をインターネット全体で見ることで、より最適な経路制御はできないのだろうか?
インターネットは、うまい具合に自律的に情報の経路が制御されることで、世界中のネットワークが繋がる素晴らしいシステムです。Google社もこのインフラの上で動いているので、このインフラの維持は自社の存続に影響します。
しかし、最近、以下のようなニュースがありました。
何を隠そうGoogleの子会社であるYoutube社が原因ではないですか。 Youtubeがいくら人気でもインターネットの回線を食いつぶしてしまっては先が見えています。TVを初めとする電波のメディアに対抗していくとしたら、今のインターネットのままでは限界が訪れてしまうということを示しています。
しかし、余剰回線というのは少なからずあるハズです。
そこで、ユーザー動線をあらかじめ把握することで、もっと最適な経路制御はできないだろうか?
1カ所に大量の情報が集中するのではなく、あいている回線を使って、より最適化された経路をたどらせるのです。そのためには世界中のあちこちにキャッシュを配置して、コンテンツデリバリーネットワークを構築したり、ルーティングそのものの制御をする必要があるのですが、いずれにせよ最適化経路の設定や、CDNキャッシュのヒット率を高めるために、統計的なユーザーニーズのリアルタイムな把握は不可欠なのです。
世界中でいつ起きるかわからない、情報ニーズ爆発に対応すべく、Googleではユーザー情報を適切に把握し、いつなんどき何が起きても適切な情報の迂回路を設けたいと考えます。
そして、電波に負けないだけのスケーラビリティを持った動画配信をすることで、本当にスケーラブルなインターネットTVを提供します。
と、ツッコミ所を提供してみる。