February 01, 2006
ライブドア問題を見ていてつくづく。ベンチャーにとっての株式上場ってのは、重い重い責任を背負うことと同義なわけで、そういえばホリエモンの本からはそういうところは見えてこなかったなぁと。
ライブドアが上場後、買収&金融にシフトしたのは正しい
ネットバブル最盛期には異常な株価がついて、そもそも使い切れないような上場益を得て、時価総額から換算すると有り得ないようなスピードの成長を期待されてるんだよと脅かされる訳だ。で、近い業態で傾いた会社を買って建て直したりするだけじゃ間に合わず、手っ取り早く数字を嵩上げできる金融業で収益を上げつつ、既に持っているWeb構築技術を活用できて設備投資に資本を要するポータルを本業としたのだろう。
もちろんこれは上記のblogの方が書かれた想定でしかないわけだが、少なくとも株に投資してもらうということは、成長責任を買っていることと同義なわけで、それが誰も彼もが狂乱のバブルの時であればともかく、バブルが弾けてしまったからこそ、その期待の大きさがライブドア社にのしかかったことは予想される。
そう考えれば昨年、株主総会で見せたホリエモンの涙もなんとなく理解できるというものだ。
ベンチャーにとっての上場とは何だろう。上場する前には、なにがしか投資をしてもらい投資家に株を渡す。渡した株は、上場益を期待したものであるから、この段階で上場をしなくてはいけないという責任が生まれる。これが本業の成長曲線と同期またはそれ以上の曲線を描く想定ができていれば良いが、それが描けないと数字のギャップに苦しむことになる。
それがIT企業の成長パターンであり、頑張るってことだと思うので、それ自体をネガティブに考えることではないが、大事なのは上場して得た資金で何をするか?というところ、本業が資金を得ることでビジネスとしてスケーラビリティが得られるか?ってことなのかなと。
なんだ当たり前じゃんと言われるとそりゃそうなのだが、ある規模以上から人を増やそうと思うと、googleでもない限り人材一人当たりのスキルは下がっていくと思うので、そういう状態で黒字を出しつつ大きくなっていくビジネスモデルってのが何より重要なのではないかと。
IT業界は、おそらく、どんな経費よりも人件費が高いんじゃないかと思うので、その人件費を効率運用しようと思ったら、難しいですよね。人が辞めてしまうコストなんて激しく高いし。育成コストも高いし。人を育成する人材や時間も本業からするとボトルネック&投資。
連続勤務年数が異様に短い会社ってのは、それこそ社内向け投資のオンパレード状態と言えるわけで、人を動かすための人件費を食い合っている状況。それでもやっていけるのは、大企業ばりに相当、仕組みがしっかりしているか、キャッシュフローを垂れ流しているかのどっちかではないだろうか。ホリエモンの本では、川の中から砂金をすくい上げるような感覚で、良質な人材を集めることを重視していたように思うが、それでも現実の人材にかかるコストは半端じゃないだろう。
やはり正当な路線としては、人材はできるだけ辞めさせずに、長期間働くことによる人材育成の投資に対する利益還元を得ることが重要。コストオーバーヘッドが、人数分の無駄として現れたらあっと言う間に黒字なんて食いつぶしてしまうんじゃないかと思ったりする。人が増えると同時に、モチベーションマネジメントはより重要になっていく。会社の意識が、ちゃんと伝わる組織構造になってかなきゃいけない。そして重要なのは、いかに単純な作業(とりあえず売ってこい!、とか)でスケーラブルにお金が儲かるビジネスを作るかじゃないかと思う。あのgoogleでさえもこれは例外ではないのだろう。(これがニューエコノミーとしては脆弱とか言う意見があるが、全然非難することではないと思うが。)
って、当たり前のことしか書いてないけど、その当たり前のことって、上場ともリンクしてるハズで。なんとなくベンチャーのゴールに上場という2文字があるような意識ってあるんじゃないかと思うけど、本当の戦いはその先に待っているんではないだろうか。このレイヤーに来るとWeb2.0もへったくれもないのかもしれないなぁとは確かに思うところである。
経営者でもないのに偉そうなことを書いてしまった。すんません。
ちなみに僕の先輩が将来社長になる会社は、毎日定時帰りできっちり儲かっているそうで(ITではない)。上場などはしておらず100人ぐらいで安定している。儲かるモデルが安定的に循環するってのはこういうことを言うんだろうなぁと。もちろん本人は、常に危機感を持っているでしょうから時代の変化に追従することはできると思うし。全くもって安泰なことです。
##しかし、そういう意味でSIerってなんで儲かるんだろうか?とか思ったりもする。だからこそいろいろあるんだろうけど。世の中難しいものですね。