December 02, 2004
今回はベタに書きます。正直に言って、すべてのIT関係者に読んでほしい本です。
2年間のシステム開発プロジェクトが社内で動いているとします。1年が経過したぐらいだと、まだ形になるシステムは何もできていない段階です。顧客は、「まだこの段階なら、いろいろ変更指示を出してもOKではないか」と思ってしまいます。もしこれがビル建設であれば、鉄骨が組み上がった段階で現場を覗いて「もうちょっと1階のロビーは広々とした方がいいなぁ、吹き抜けの方がいいんじゃない。エレベーターは左手じゃなくて右手に置こうよ」などと指示する人はいないと思います。建設には素人でも、目で見た現場から「それは今さらできないだろう」と直感的に理解できるからです。
この辺は、理解していない「プロ」も沢山いるのではないでしょうか?
とにかくソフトウエアの「複雑さが目に見えない」ことを気がついてない人が多すぎるような気がします。その目に見えないことを忘れて、気軽に1階の柱を切ってしまい建物が崩れてしまったり、階段の位置を変えようとして動線が狂ってしまった例は沢山あるのではないでしょうか?あなたの周りに悪意のない悪徳リフォーム業者みたいな仕事してる人いませんか?
ここで言うソフトウエアというのは、HTMLのことも含んでいます。本書でExcelの計算式をコンピュータプログラミングと記述していることに大変好感を持ちましたが、HTMLも間違いなくコンピュータプログラミングです。JavaScriptだけがプログラムではありません。
そしてHTMLもAタグでページとページを繋げば、もう構造を持っているといえます。このリンクをつなげていく行為は、家を建てていくのと全く同じことです。グローバルナビゲーションは、その家のメイン通路です。階層が深すぎたり、理解できないリンクを貼っているサイトは、忍者屋敷のように人を迷わせることを前提にした建物と同じです。
せっかくHTMLの話が出たついでに話それますが、上記の引用のような事例は、システム開発のみならず、Web制作の世界では、より沢山おきていると思います。その理由は、
・開発者と違いSE本やマネジメント、開発手法の教科書がない。産業として新しいため、ディレクターなどに、こういった教育の機会がない。
・HTMLは変更が簡単である・・・とクライアントも思い込んでるし、作ってる側もその危険性を理解していない。HTMLの変更容易性と、サイト構造を気軽に変えるのは意味が違います。
本書の著者はNTTデータの方とネットイヤーの立ち上げに参加し、現在コンサルを行われている方であり、企業向けシステムの話が多かったりするのですが、内容の本質は、どんな小さなWeb制作、開発にも適用される話です。Webが企業戦略の一つに使われる以上は、どんな小さなサイトでも期待される効果(企業収益に寄与すること)は、どんな巨大なシステムとも共通です。
日本のITの真実が惜しげもなく語られている良書だと思います。
最低でも自分がかかわるクライアントには全員読んで欲しい。そんな一冊です。
このエントリを読んで興味を持っていただいたIT関係の人は、是非、周りの人にも薦めて下さい。社内のMLにも投げてください。クライアントにも薦めてください。
この本に書いてあることが、全ての日本人に理解してもらえば、日本のITは間違いなく変わります。
あと、ついでですが、最後まで読んで知人が本書に関わっていることを知ってびっくりしました。