August 31, 2003
Blasterの亜種であるBlasterBの作者が捕まった。犯人はアメリカに住む18歳の少年だ。
BlasterがNewYorkの停電事故を引き起こしたのでは?といわれてるだけに、Blaster自体の作者がつかまると終身刑もありうるのでは?という推察も聞くほど影響が大きい事件だった。
さて、NewYorkの大規模な停電だが、話によると複数の送電所が芋づる式にダウンしてしまったらしい。そのニュースを見たとき、この本を思い出した。
この本によると、今の送電所は、電線路が切断されたときに給電がストップしないように、隣の送電所から線が自動的に切り替わることで電気が安定供給されるという便利な仕組みなのだそうだ。
これらの「電気ネットワーク」は、元々の送電所が止まってしまったことを想定して作っているのではなく、一時的なヘルプのために考えられた発想なので、送電所自体が落ちてしまうと、その「電気ネットワーク」を媒介に、周りの送電所に多量の負荷がかかってしまう。
そして、いつもはローカル用の電気さえ運んでよければよかった送電線に高い負荷がかかったせいで切断されてしまい、それら現象が芋づる式に発生、結果的に広範囲に渡ってシステムダウンが起きてしまうという話が載っていた。
こういう現象は、ネットワークが持つ特性として、この本には紹介されている。インターネット自体も、もともとアメリカ内部のある基地が攻撃されたとしても、通信が途絶えないようにと他点間の経路の情報を制御するという発想から作られているものだが、実際には重要なルーターが、ある程度、システムダウンしてしまうと、情報パケットは残りのルーターに集中して、芋づる式に落ちてしまうのではないか?と想定されている。
これは、多かれ少なかれ経験している事項であろう。例えば、夜0:00から申し込みができますとかいう、インターネットショッピングで、みんながアクセスすると、Webサイトが遅くなってしまい、結果、誰も買い物ができないという悲惨な目にあうことがある。
これは、Webサーバーがみんなに対して「平等」であるが故におきうる。先着100名様以上は、このサイトにアクセスすらできないと言うネットワーク制御ができていれば、なんとかなるのだが、インターネットの特性として、ショッピングをさせるのも、申し込みを断るのも、基本的にWebサーバーの仕事になるので、みんながアクセスしてくると、店の中のお客さんも遅くなってしまう。
そんな未完成なシステムの上で成り立っているのがWorld Wide Webの特徴と言える。しかしながら、この「平等」さは、みんなに対して無限の可能性を提供しているのだから、未完成さを一概に責めてはいけない。それ自体は、時間をかけて改善されていくものだと考えている。そうじゃないと、NTTグループが優先的にネットワークを制御してしまい、個人やベンチャー企業では、Webサーバーすら持つことができないという状態になりかねない。実際、NTTや日本の通信キャリア大手がインターネットに出遅れたのは、この未完成なシステムを「なめていた」に過ぎないのだから。
さて、話がずれたが、ここで紹介している本で書かれていることは、ネットワークそのものの考察である。例えば、大量にアクセスのあるサイトと、ぜんぜんアクセスされないサイトの違いは何であるか?や、エイズをばら撒く奴は、実は何人もいないとか、金持ちはより金持ちになる社会の仕組み・・・など、あらゆるものはネットワークとしてなんらかしらの連鎖を持ち、その連鎖の中で情報や経済が、ハブと言われる存在に集中している様を知ることができる。
ただし、僕は読んでて、正直言うと、途中で飽きた。大体、1/3も読めば十分かなという印象で、なんというか、理屈っぽいというか、途中で、もう良いよって思う本だった。学生時代ぐらいなら興味深く読んでたかもしれないけど、ビジネスアイディアにまでつながる本ではないので、ちょっと読めば十分って感じ。自分の中に潜在的に思ってたことを、きれいに文章にしてるって感じで共感して終わり・・・だからかもしれないけど。
ただし、この本を読んでるのと読んでないのでは、いろんなものの見方が変わるんじゃないかな。インターネットに関わる関わらないに限らず、世の中の仕組み本として、一回読んでおくべき一冊だとは強く思う。
ところで、このNewYorkの停電事故がもしBlasterの仕業だったとしたら、ある意味面白すぎるね。なぜなら、BlasterというWORMが仮想空間ネットワークで芋づる式に連鎖した結果、リアルな電力供給ネットワークを壊したと言うのであれば、とっくにインターネットと、送電設備というあまりにも基本的なインフラはつながっていることになるわけで、それもまたネットワークなのだから。